はじめに(目次)

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リンク切れやデザインの崩れがあれば、ご迷惑おかけいたします。

このブログでは、古今東西の神秘主義思想を紹介します。



神秘主義思想は、哲学、神学、宗教、神話、自然科学、現代では心理学などの領域に渡ります。
宗教としては、秘教、密教…、学としては、神秘学、神智学、星辰学、オカルティズム、霊学…、実践としては、瞑想、観照、ヨガ、秘儀、魔術、降神術、錬金術、煉丹術…などと呼ばれてきた領域です。



神秘主義的な哲学は「神智学(セオソフィー)」とも呼ばれます。
このブログでは、「神智学」という言葉を多用し、哲学的・概念的に表現された思想だけではなくて、象徴的イメージや神話として表現された思想も含めて考えます。
これは時代や地域を超えた普遍性を持っているので、「永遠の哲学」と呼ばれることもあります。

序文の後半、注意書きは、目次の後に続きます


==目次==

目次内リンク >古代 >ヘレニズム・ローマ
 >イスラム >インド >中国
 >中・近世ヨーロッパ >近代 >現代 >日本


◆◆◆序:神智学とは◆◆◆◆◆◆

神秘主義とは  ・3つの表現スタイル
象徴と象徴体系
神智学とは(ソフィアとロゴス)
神話・宇宙論・哲学からの神智学の誕生


◆◆◆通論◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

神秘主義哲学の階層論  ・悪と堕落の捉え方
創造と進化と帰還  ・瞑想修行法と実践
象徴体系のシステム比較  ・インドと中国の霊的身体論の比較

<姉妹サイトへのリンク>
象徴の3つのレベル、体系と実践 ・光の神秘主義1:有史以前とイラン
光の神秘主義2:インド、エジプト、プラトン主義、ユダヤ・キリスト教


◆◆◆古代編◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 


◇◇創造神話と古代神智学◇◇◇◇

創造神話の神智学化  ・宇宙開闢神話の構造
天地創造神話の構造  ・エジプトの創造神話
メソポタミアの創造神話  ・ギリシャの創造神話
インド・ヨーロッパ語族のパンテオン
インド・ヴェーダの創造神話
インド・ヒンドゥー教の創造神話
イラン・ペルシャの創造神話



◇◇バビロニアの宇宙論とペルシャの救済神話◇◇◇◇

占星学的宇宙論と神々
マズダ教 vs ミスラ教
ゾロアスター教の宇宙論(時間)と神話
ゾロアスター教の宇宙論(空間)とパンテオン
ズルワン主義の潮流   ● ズルワンと三位一体
ズルワン主義の宇宙論  ● ミトラの顕現と救済論



◇◇古代ギリシャの秘儀宗教と神秘哲学◇◇◇◇

 
 <秘儀宗教>
秘儀宗教とは  ・エレウシス秘儀
ディオニュソス(バッコス)秘儀
オルフェウス秘儀

 
 <ソクラテス以前>
ソクラテス以前の哲学
至高存在と根源の探究(タレス~アナクサゴラス)
生滅する宇宙(アナクシマンドロス、ヘラクレイスト)
ピタゴラス教団の輪廻思想
エンペドクレスによる統合

 
 <プラトン・アリストテレス>
中期プラトンの神秘主義哲学
プラトンの不文の教説とピタゴラス主義
プラトンの宇宙論
アトランティス伝説とオリエント神話
後期プラトンの観念哲学  ・アリストテレス神学
プラトン、アリストテレスの影響



◇◇ヘレニズム~ローマ期◇◇◇◇

<ヘレニズム・ローマの諸思想>
ヘレニズムの宇宙論
イシス秘儀とセラピス秘儀
7光線占星学理論とマグサイオイ文書
ミトラス秘儀と12星座神話  ・ストア派
アルビノスと中期プラトン主義
ヘルメス主義(ポイマンドーレス、アスクレピオス)
ゾシモスとアレキサンドリア錬金術  
「カルデア人の神託」  ● マニ教

<グノーシス主義>
グノーシス主義の思想  ・グノーシス主義の潮流と諸派
「ヨハネのアポクリュフォン」
プトレマイオス派グノーシス主義
「ゾーストリアノス」と「マルサネース」

 <新プラトン主義>
新プラトン主義
プロティノスの一者と階層  ● プロティノスの流出と帰還
イアンブリコスと降神術
プロクロスの階層と系列  ・プロクロスの三性と帰還



◇◇古代ユダヤ&キリスト教◇◇◇◇

 <ユダヤ教>
エジプトのアマルナ革命とユダヤ教の起源
ユダヤ教のヘレニズム化と女神信仰
メルカーバー神秘主義
「セフェル・イエッツラー」とセフィロート神秘主義

 <キリスト教>
イエスの思想とキリスト教神話 ・秘儀宗教としてのキリスト教
パウロとヨハネの神秘主義  ・キリスト教の三位一体説と異端説
ギリシャ正教のヘシュカズム  ・教父哲学と神の闇
偽ディオニシオスと天使の位階



◆◆◆古代~中世東洋編◆◆◆◆◆◆◆◆◆


◇◇イスラム教◇◇◇◇

古代思想の継承と東西交流

 <シーア派、イスマーイール派>
ムハンマドの夜の旅
シーア派とイマーム
シーア派のミスラ神話(ミール派イスラム)
12イマーム派と隠れイマーム
イスマーイール派の流れ
初期イスマーイール派の神話
スーパーシーア派とヤザダ教7大天使論
イスマーイール派神話の哲学化
イスマーイール西方派の救済神話

 <スーフィズム>
スーフィズム(ハッラージとバスターミー)
スーフィズムと意識の階梯
スーフィズムの秘密言語と象徴

 <イスラム哲学>
理性と信仰の対立
イスラム哲学とイブン・スィーナー
スフラワルディーの照明学
イブン・アラビーの存在一性論
ジャービルとアラビア錬金術



◇◇古代インド◇◇◇◇

古代から中世へ  ・オリエント・イランの影響

 <バラモン教>
古ウパニシャッド
サーンキヤ哲学
ヴェーダーンタ哲学(バルトリハリとシャンカラ)
パタンジャリの「ヨガ・スートラ」

 <ヒンドゥー教>
ヒンドゥー教の宇宙論:存在の階層
「ヴィシュヌ・プラーナ」の宇宙論:空間と第一次創造
「ヴィシュヌ・プラーナ」の宇宙論:時間と第二次創造

 <仏教>
仏教の流れと神秘主義  ・釈迦の思想と「スッタ・ニパータ4-5章」
部派仏教のアビダルマ哲学
南方上座部とブッダゴーサの「清浄道論」
説一切有部とヴァスヴァンドゥの「倶舎論」
大乗仏教の誕生  ・如来蔵思想
大乗仏教の仏陀観と真理観
中観派と般若学  ・瑜伽行唯識派

◇◇中世インドとその周辺◇◇◇◇

タントラ(ヴァジュラヤーナ、密教)の思想
タントラの身体論(クンダリニー、ビンドゥ、アムリタ)

 <ヒンドゥー教系>
ヴィシュヌ教、シヴァ教、シャクティ教
ヴィシュヌ教パーンチャラートラ派
シヴァ教 聖典シヴァ派  ・シヴァ教カシミール派
シャクティ教シュリー・クラ派の宇宙論
シャクティ教シュリー・クラ派の儀礼と行法
タミルの18人のシッダの伝統
「ハタ・ヨガ・プラディーピカー」(ナータ派のハタ・ヨガ)
「シヴァ・サンヒター」(シャクティ教のクリヤ・ヨガ)
「ゲーランダ・サンヒター」(ヴィシュヌ教のガタ・ヨガ)

 <仏教系>
密教(タントラ仏教)の発展段階
金剛乗と「金剛頂経」(ヴァジュラ・ヤーナ)
無上ヨガ・タントラの思想と潮流
無上ヨガ・タントラの生起次第
無上ヨガ・タントラの究竟次第
「秘密集会タントラ」の思想
「秘密集会タントラ」の二次第
「チャクラサンヴァラ・タントラ」の思想
「チャクラサンヴァラ・タントラ」の究竟次第
「カーラチャクラ・タントラ」と終末論
「カーラチャクラ・タントラ」の思想
「カーラチャクラ・タントラ」の二次第
ゾクチェン 

 <その他>
イスマーイール・パミール派
シク教(カビールとナーナク)



◇◇中国◇◇◇◇

 <道教・儒教系>
「老子」と「荘子」(道家思想の成立)
「繋辞伝」と「淮南子」(漢代の道家思想)
玄学(南北朝時代の道家思想)
陰陽五行説と鄒衍
道教の成立(三天説と三尊説)
「抱朴子」と葛氏道と煉丹術
上清派と存思法
天師道(道教の確立)  ・全真道(北宗と南宗)
宋学と程伊川  ・気の身体論
内丹の思想  ・内丹の歴史
鍾呂派の内丹法  ・南宗・北宋の内丹法

 <仏教系・その他>
格義仏教  ・「大乗起信論」
智顗と天台教学  ・法蔵と華厳教学
中国禅の流れ1(北宗禅から南宗禅へ
中国禅の流れ2(唐代禅から宋代禅へ)
中国のミトラ教(明教・白蓮教)



◆◆◆中世・近世編◆◆◆◆◆◆◆◆◆


◇◇中世のユダヤ&キリスト教◇◇◇◇

 <キリスト教>
マグダラのマリア派とカタリ派
テンプル騎士団と聖杯伝説
ヒルデガルトと女性の神性
3つのプレ・ルネサンス
スコトス・エリウゲナ
スコラ学を捨てたトマス・アクィナス
エックハルトと自由心霊派
ラビアのテレサと十字架のヨハネ
グレゴリオス・パラマスのヘシュカズム

 <ユダヤ教>
中世ユダヤ神秘主義、カバラの潮流
バーヒルと盲人イサク(フランス・カバラ)
「イユーン」「ゾーハル」「テムナー」(スペイン・カバラ)
コルドヴェロとルーリア(パレスチナ・カバラ)
エン・ソフと生命の樹(神智学的カバラ)
アブラハム・アブラフィア(預言カバラ)


◇◇ルネサンス~近世ヨーロッパ◇◇◇◇


<ルネサンス>
ルネサンスと古代神学
フィチーノの新々プラトン主義
フィチーノの魔術的ヘルメス主義
ピコ・デラ・ミランドラのキリスト教カバラ
アグリッパによる魔術の体系化
中世~ルネサンス期の錬金術
パルケラススと錬金術
ブルーノのエジプト魔術的ヘルメス主義
ブルーノによる魔術の内面化
ジョン・ディーとエノキアン・タブレット
ヤコブ・ベーメ
薔薇十字宣言とアンドレーエ
薔薇十字啓蒙運動


<近世>
スウェデンボルグの神論と宇宙論
スウェデンボルグの救済論と歴史観 
ドイツ観念論と知的直観
シェリングの無底と神話
ノヴァーリスの魔術的観念論
パスカリとサン・マルタン(マルティニズム)
ファーブル・ドリヴェの哲学的人類史



◆◆◆近代・現代編◆◆◆◆◆◆◆◆◆


◇◇近代◇◇◇◇


<近代神智学>
ブラヴァツキー夫人と神智学協会の歴史
神智学協会アディヤール派と分派の歴史
「シークレット・ドクトリン」の宇宙発生論と宇宙の階層
「シークレット・ドクトリン」における人間の本質と階層
「シークレット・ドクトリン」の生命発生論と地球進化系
「シークレット・ドクトリン」の人類発生論と堕天神話
7光線理論と秘教占星学(アリス・ベイリー、他)
ハイアラーキーとイニシエーション(ベイリーとリードービーター)
神智学の思想の背景と本質

<人智学>
ルドルフ・シュタイナーの生涯と人智学
人間の9本質と霊界の階層構造
薔薇十字の修行法とイニシエーションの階梯
宇宙進化論1(惑星紀)
宇宙進化論2(根幹人種期と文化期)
キリスト論とイエス論
悪魔と天使(ルツィフェル、アーリマン、ミカエル)
霊学自由大学の秘教講義


<魔術関係>
エリファス・レヴィとフランス・オカルト復興
イギリス・オカルト復興と黄金の夜明け団
黄金の夜明け団の歴史1(設立と改革)
黄金の夜明け団の歴史2(分裂と公開)
黄金の夜明け団の位階システム(入門儀式、カリキュラム)
黄金の夜明け団の教義
黄金の夜明け団の魔術と技法
黄金の夜明け団のエノク魔術
フォーチュン、リガルディーとその弟子たち
クロウリーとOTOの歴史
クロウリーの魔術思想、テレマ
オースティン・スペアのキアイズム
ピート・キャロルの混沌魔術


<エラノス会議系>
エラノス会議と東西霊性の統一理解
ユングのミトラス秘儀参入
分析心理学という民族宗教運動
ユングの理論と問題点(個性化と能動的創造力、元型)
ユングと西洋宗教の解釈(キリスト教、グノーシス主義、錬金術)
ユングと東洋秘教の曲解(道教、仏教、インド哲学)
アンリ・コルバンの想像的世界と創造的想像力
井筒俊彦の東洋哲学1(コトバと言語アラヤ識)
井筒俊彦の東洋哲学2(類型と意識の構造)


<その他>
グルジェフの生涯と思想
グルジェフの宇宙論と人間論
グルジェフのワークとムーヴメンツ
アンリ・ベルクソンと神秘主義
カントールの無限論と数理神学


<インド>
ラーマ・クリシュナのカーリー女神信仰
ヴィヴェーカーナンダの普遍宗教
オーロビンド・ゴーシュのインテグラル・ヨガ
ラマナ・マハルシの真我探求
マハー・アヴァター・ババジの弟子達
スリ・ユクテスワとパラマハンサ・ヨガナンダの思想
ラヒリ・マハサヤのクリヤ・ヨガ
クリシュナムルティの反伝統主義
現代ヨガ(アイアンガーとパタビ・ジョイス)



◇◇現代◇◇◇◇

<ニューエイジ系>
ニューエイジの背景(ビートニク、ヒッピー、サイケデリック)
ニューエイジのネオ・オリエンタリズム、ネオ・シャーマニズム
トランス・パーソナル心理学
ニュー・サイエンス
ケン・ウィルバーのアートマン・プロジェクト

<ネオ・シャーマニズム系>
ネオ・シャーマニズムの特徴・類型・技法
マイケル・ハーナーのコア・シャーマニズム
カルロス・カスタネダとドン・ファン・シリーズ
カスタネダのドン・ファン・シリーズの思想
ドン・ミゲル・ルイスのトルテック(メキシコ)
アルベルト・ヴィロルドのワン・スピリット・メディスン(南米)
サージ・カヒリ・キングのフナ(ハワイ)


<その他>
ジル・ドゥルーズと神秘主義
ユージン・ジェンドリンのフォーカシング
アーノルド・ミンデルのプロセス指向心理学
プロセス指向心理療法のワーク
欧米新仏教とインド新仏教
現代物理・現代数学と神秘主義のアナロジー1(量子論・量子重力理論・絶対数学)
現代物理・現代数学と神秘主義のアナロジー2(現代宇宙論・圏論・諸学の統一)


◆◆◆日本編◆◆◆◆◆◆◆◆◆


◇◇日本◇◇◇◇

<古代>
陰陽道
空海の歩みと山岳仏教・神仏習合の潮流
真言乗と真言宗  ● 空海の思想

<中世:仏教系>
修験道の柱源法流と慧印法流 
天台本覚思想と玄旨帰命壇と星辰の秘法
暗黒と愛欲と異形の天部達
親鸞の自然法爾
道元の只管打坐と身心脱落  ・道元の非思量と現成公案
正法眼蔵の七十五巻本と十二巻本

<中世:神道系・その他>
本地垂迹説と三輪流神道  ・伊勢神道(渡会神道)
猿楽と荒神と黒い翁  ・金春禅竹の翁論と六輪一露説
吉田兼倶の唯一神道  


<近世~近代:古神道・霊学など>
平田篤胤と久延彦祭式
本田親徳の霊学と一霊四魂説  ・本田親徳と鎮魂帰神法
山口志道と中村孝道の言霊学
大石凝真素美の言霊学と天津金木学
神仙道の潮流  ・宮地神仙道
川面凡児の霊魂観  ・川面凡児の禊・鎮魂行法
折口信夫の産霊信仰と鎮魂法
折口信夫の「死者の書」と神道の宗教化


<近世~近代:出口王仁三郎と大本教>
出口王仁三郎と大本の歴史1(厳/瑞の二霊統)
出口王仁三郎と大本の歴史2(伊都能売の霊統) 
大本の宇宙生成神話  ・大本の隠退・贖罪神話
出口王仁三郎の思想と大本霊学

<近世~近代:仏教など>
白隠慧鶴の公案体系  
鈴木大拙の東方仏教と神秘主義
鈴木大拙の日本的霊性と即非の論理
西田幾太郎の絶対無の哲学

<現代>
井筒俊彦の東洋哲学1(コトバと言語アラヤ識)
井筒俊彦の東洋哲学2(類型と意識の構造)
中沢新一のゾクチェンとポスト構造主義
中沢新一の流動的知性とレンマ的知性


<通史>
日本の弥勒信仰(弥勒菩薩と弥勒神)


<序文の続き>


1つの重要なテーマとしては、古代のオリエントに発して東西の文化交流によって発展した流れに注目しています。
古代の文化の中心地は、世界最初の都市文明を築いたメソポタミアと、世界最初の大帝国を築いたペルシャです。
ですから、大局的に見ると、この地方を中心にして東西に神智学が伝わっていったと推測できます。
そして、神智学の大枠での主な最終形は、西洋世界ではブラバツキー夫人やシュタイナー、イスラム世界ではイスマーイール・タイイブ派やスフラワルディー、インド世界ではカーラチャクラ・タントラなどでしょう。


神秘主義思想には普遍的な意味、価値がありますが、個々の思想の現代的な意味については、様々な解釈が可能です。
例えば、古代から神話を哲学的、学問的に解釈することが行われてきました。
現代では、逆に、神秘哲学や神智学を、神話のように扱って解釈することも必要でしょう。
ただ、解釈の高度な次元では、解釈は不要になるというのが、神秘主義思想の特長でもあります。


*最初の方の文章は、30年ほど前の若い頃にメモ的に書いた文章だったりしますので、

 随時、書き換えたりもします。

*幅広い領域について書いていますので、テーマによって浅いものがあることは、お許しください。

*参考文献をお知りになりたい方はご連絡ください。

*コメントをいただいても気づかなかったり、お返事が遅くなる、お返事できないこともありますので、
 ご了承ください。


*姉妹ブログ本「神話と秘儀」「世界の瞑想法」「仏教の修行体系」「夢見の技術」「シャーマンと伝統文化の智恵の道」、「MROFOハブ・サイト」もご参照ください。

インドと中国の霊的身体論の比較

MORFO HUB」で書いた記事ですが、当サイトのテーマに合っているので転載します。




インドのタントラ(ヒンドゥー・タントラ、後期密教)には、霊的身体論と、それに基づく瞑想法(ハタ・ヨガ、究竟次第)があります。


プラーナ、ナーディー、チャクラなどを含む霊的身体論と、クンダリニー・ヨガやピンダグラーハなどの行法です。


一方、中国の道教の仙道にも、それに似たものがあります。


気、経絡、丹田などを含む気の身体論と、周天法などの内丹法の行法です。


両者の間の共通点と相違点を簡単にまとめて、見てみましょう。





<プラーナ/気の階層>




インドでも中国でも、物質より微細な次元の存在として「プラーナ(ヴァーユ)」と「気」、そして、それらの次元の身体を語ります。


タントラでは、プラーナは、3段階の階層で語られます。
下から「粗大なプラーナ」、「微細なプラーナ」、「極微の(原因的)プラーナ」です。
「微細なプラーナ」は、中央管の中を流れ、「極微なプラーナ」な不滅の心滴(胸のビンドゥ)の中にあります。


仙道では、気はまず、「後天の気」と「先天の気(元気・炁)」に分けられます。
さらに、「先天の気」は、下から「精」、「炁(気)」、「神」の3段階(3形態)に分かれます。
「先天の気」は腎臓(命門)あるいは、脾臓(黄庭)にあります。


両理論間の対応付けは、すっきりとはできません。


ですが、両理論ともに、プラーナ/気にレベルの違いがあり、それと精神のレベルが対応すると考える点は同じです。




<プラーナ/気の場所>




タントラでは、プラーナには主に5つあって、それが流れる場所、働きが異なります。


心臓周辺の「プラーナ」、臍周辺の「サマーナ」、肛門周辺の「アパーナ」、頭部・手足の「ウダーナ」、全身の「ヴァーナ」です。


一方、仙道では、気は主に3つに分かれます。
表面全体をめぐる「衛気」、胸部を中心に巡って呼吸や飲食に関わる「宗気」、そして、身体の経絡に沿って流れる「営気」です。


流れる場所や働き、分類数は異なりますが、気の分析に対する発想は似ています。




<プラーナ/気の二元性と統一>




中国では気は、その本質から「陰気」と「陽気」に分けられます。
陰陽は、基本的な二元論となります。


陰陽二気は、身体上では、腎/心臓に対応し、それが脾臓の黄庭で統一されます。
また、性別では女/男に対応し、両者が気を交換することで統一されます。


タントラの二元論は、頭部の「チャンドラ(月)」と腹部の「スーリア(太陽)」です。
密教では、「白い心滴」と「赤い心滴」と表現されます。
性別では、男/女に対応します。


両者は胸の「不滅の心滴」で統合されます。
ここは、ヒンドゥー・タントラではアートマンの場です。


この心滴(ビンドゥ)の二元論は、プラーナが流れる左右管の「イダ」、「ピンガラ」としても表現され、両者は中央管「スシュムナー」で統一されます。




<霊的器官>




タントラでは、プラーナの流れる流路は「ナーディー(脈管)」、一方、中国では、気の流路は「経絡」と呼ばれます。


インドではプラーナのスポットは、重要なものから「ビンドゥ」、「チャクラ」、「マルマ」などがあります。
一方、中国では、「丹田」、「精宮」、「経穴」です。


タントラでは、主要なナーディーは、中央管「スシュムナー(密教ではアヴァドゥーティー)」、左右管の「イダ(密教ではララナー)」、「ピンガラ(密教ではラサナー)」です。


画像
インド・カーングラ派のチャクラ、ナーディ図 1820年頃


それに対して、中国では、主要な経絡は、中央の「衝脈」と、体の前後の「任脈」、「督脈」とされます。


画像
監脈循行図 「医宗金鑑」より


インドと中国では、左右と前後の違いがあります。


インドでは、中央管に沿った7つほどの「チャクラ」が有名で、中国では、7つの「精宮」がほぼこれに相当します。


インドでは、チャクラ以上にプラーナの根源となる3つの「ビンドゥ(心滴)」が重視されます。
頭部の「チャンドラ(白い心滴)」、胸部の「アナハタ(不滅の心滴)」、「腹部のスーリア(赤い心滴)」です。


概念は異なりますが、中国の、頭頂、胸、腹部の3つの「丹田」とほぼ位置は一致します。


また、プラーナ/気の流れを止める3つの障害が、インドでも中国でも語られます。
タントラにおいては、「グランディ」と呼ばれ、眉間、胸、会陰にあります。
中国においては、「関」と呼ばれ、三丹田の場所である頭頂、胸、腹部にあります。




<体内神>




タントラや密教では、ヤントラやマンダラの諸尊を身体各部に観想して、その照応関係を築きます。


また、タントラではクンダリニーを女神シャクティ、頭頂のチャクラ部をシヴァ神と考えます。
密教では、頭頂から垂れる甘露をヘールカとし、これが各所に回って、各チャクラにいるダキニと交わると考え、腹部にいるクンダリニーをヴァジラヴァーラーとします。


このように、体内には、神々、諸尊が存在すると考えます。


仙道では、このような神々を「体内神」と表現し、やはり、存思(観想)をします。
例えば、眉間と両目に太極と陰陽に相当する神々、五臓には五臓の神々、三丹田には三天の神々、といった具体です。




<生命力の消費と滋養>




タントラでは、根本的な生命力は、頭部の軟口蓋の上部あたりにある「チャンドラ(月、シヴァ、ヘールカ)」にあり、そこから「アムリタ(甘露・菩提心)」として垂れ、腹部、もしくは、会陰にある「スーリア(太陽)」で消費され、やがて死に至ると考えます。


生命力は、性活動や消化で消費され、全身にも回ります。


仙道でもほぼ同様に考えますが、それは「先天の気(元気)」とされ、それがあるのは腎臓間の「命門」、もしくは脾臓の「黄庭」、女性の場合は子宮とされます。


そのため、ハタ・ヨガの「ケーチャリー・ムドラー」では、軟口蓋の上方に舌をつけアムリタを飲み、喉のヴィシュダ・チャクラに貯め、それを消費せずに全身を滋養します。


一方、仙道の「嚥津法」では、「玉液」と呼ばれる唾液は「精」が液体化したものと考え、これを飲みますが、これは「ケーチャリー・ムドラー」に類似したものでしょう。




<逆行の行法>




仙道では、霊的身体が胎児の状態を理想とし、瞑想(気の制御や観想)によってこの胎児の状態に戻そうとします。
呼吸で言えば、「胎息」と呼ばれる先天的な「内気」の呼吸システムのみが働く状態です。


そのためには、まず、後天的な「気」を練り、その後、先天的な「精」を目醒せ、それを「炁」に戻し、さらに「神(陽神)」に戻します。
そして、最終的には、身体を「道(無、虚)」に戻します。


このように、生命力を逆行させることを「逆修返源」と呼びます。


密教でも、父タントラ(マハーヨガ・タントラ)の究竟次第の「風のヨガ」や「聚執(塊取、ピンダグラーハ)」では、全身の「粗大なプラーナ」を中央管に戻して「微細なプラーナ」にし、さらに不滅の心滴に戻して「極微なプラーナ」にします。


ハタ・ヨガでも、呼吸を止める「クンバカ」には、「胎息」と同様の意味があるのかもしれません。
特にケーヴァラ・クンバカは、自然に通常の呼吸がなくなり、クンダリニーの覚醒につながります。


そして、「クンダリニー・ヨガ」では、基底部のクンダリニーを頭頂にまで戻します。


また、両脚を上げる姿勢で行う「ヴィパリータ・カラニ(逆行のヨガ)」では、腹部や性器にある性的エネルギーをチャンドラまで逆流させます。




<結合の行法>




仙道の内丹法では、男女による陰陽二気の交わりによって胎児が生まれることを再現して、自分の体内で新しく「胎」を作ります。
具体的には、腎/心臓の陰陽二気を混ぜるのですが、これを「竜虎の交わり」と呼びます。


ハタ・ヨガの「ヴィパリータ・カラニ」でも、チャンドラとスーリアのエネルギーを結合させる方法があります。


母タントラ(ヨーギニー・タントラ)の究竟次第の「チャンダリーの火」などでも、「白い心滴」を融解して甘露を垂らし、「赤い心滴」を発火させて上昇させ、両者を結合して、全身を滋養します。




<性の行法>




仙道の「房中術」は、性行為を通して男女の間で相手の「先天の陰/陽気」を交換します。
これを「陰陽服気」、「男女煉鼎」などと表現します。


男性は女性から陰気をもらうと思いがちですが、「先天の陰気」は男性の中でも成長後に発生します。


そうではなく、男性の中で減少した「先天の陽気」を、女性に発生した「先天の陽気」で補うのです。


さらに続いて行う「環精補脳」では、男女煉鼎で練られた精を頭頂(黄宮)にまで上げます。
これは、「後天の精」を「先天の精」に戻し、上丹田の「先天の神」と合体させるものです。
そして、その後、息を吐きながら腹部に落とします。


ハタ・ヨガでも、性ヨガ(ヴァジローリー・ムドラー)では、男性の精液の中にある「ビンドゥ」のエネルギーと女性の経血の中にある「ラジャス」のエネルギーを結合して、身体を浄化・滋養します。


母タントラ(ヨーギニー・タントラ)の究竟次第でも、性ヨガは重視されます。




<作られる霊的身体>




仙道の内丹法では、「陽神」と呼ばれる陽気でできた霊的身体を作ります。これには自分の意識も入っていて、体外に出して周りを歩かせることも行います。


画像
丹田中の陽神(右)とそれを頭から出す出神(左)「太乙金華宗旨」より


一方、父タントラ(マハーヨガ・タントラ)の究竟次第では、もともとある自分の霊的身体(意成身)とは別に、微細なプラーナと魂できた「幻身」を、不滅の心滴から作り出します。


両者は似ていますが、「陽神」の方が密度が高くてより物質に近い存在のようです。


ゾクチェンの最終段階に到達した修行者は、「大いなる転移」によって自身の肉体を「虹身」に変えます。
これは、元素のエッセンスである光でできた身体で、「報身」とは違って一般の人間に働きかけることができるされます。


ゾクチェンの「虹身」は、母タントラ(ヨーギニー・タントラ)の「虹身(虹身光身)」、カーラチャクラ・タントラの「空色身」と同種のものかもしれません。
これらは、「心滴」が尽きた時に現れる「極微のプラーナ」を越えた次元の身体でしょう。


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虹の身体になるパドマサンバヴァのタンカ


「大いなる転移」では、生きながら、もしくは、死後に、肉体が小さく収縮し、人によっては最終的に消えてなくなります。


これは、現象としては、仙道の、死体が消えてなく「尸解」に似ています。


内丹法では、「陽神」を虚に戻すために煉っていると、光が放射するようになります。
さらに肉体を「陽神」の中に溶け込ませることで、肉体は消失しますが、これを「虚空粉砕」と呼びます。


「大いなる転移」も「尸解」、「虚空粉砕」も、死はなく不死の獲得とされます。


仙道では、肉体のまま虚空?に昇る「白日昇天」が伝説的に語られますが、密教にはこの種のものはないようです。




*今回は触れませんでしたが、インドでも中国でも、霊的身体論やその行法は、医学や錬金術(煉丹術)とも深く関係しています。



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象徴体系のシステム比較


MORFO HUB」で書いた記事ですが、当サイトにテーマに合っているので転載します。




「象徴」は非常に抽象的で未知の何ものか、言葉にできない力のようなものを指し示し、それを意識の中に働かせることができます。
それは自然の諸力と意識・無意識の諸作用の両方を同時に指し示し、動かします。


伝統文化や神秘主義思想は、宇宙の構造を「象徴体系」という形で捉えることが多くあります。
概念による論理的な記述ではなく、神話のような神格的存在の物語でもなく、象徴間の直接的な関係性のみで示すのです。


象徴体系は、宇宙の原型でもあり、パンテオンでもあり、暦や方位を現わすためにも使われます。
それは、古代の一種の自然科学であり、占術であり、修行においてはマップであり、ハシゴであり、魔術においては操作板であり、夢や神託においては解釈学です。


例えば、ある象徴体系が、春夏秋冬の季節循環と深く関係していて、それらから発生したとしても、各象徴が表現するものは、具体的な現象を越えて抽象的なものとなります。


その象徴体系は、季節以外のものにも重ねられるようになり、抽象度が増します。
そして、その象徴体系が示す原理から、様々な領域における具体的な現象が生み出されたと考えるようになります。




以下、東西の伝統文化、神秘主義思想の象徴体系のシステムを大きく分類して整理します。


水平型、循環型、垂直型、方形型、放射型、準放射型、垂直二極-統合型に分類しましたが、この類型はこの文章を書く際に、私が考えたものです。




<水平型>




象徴間の関係に、垂直的な価値観の違いがない体系が「水平型」です。


具体例は、例えば、空間的な方向に関わる体系です。


東西南北の「四方神」の体系は、世界中に存在しますが、中国の


・東=青龍
・南=朱雀
・西=白虎
・北=玄武


が有名です。


中国では、8方向の「八門」、12方向の「十二支」など多数の方向体系があります。




<循環型>




水平型と同様に垂直的な価値観の違いはないのですが、循環する時間と関係している体系が「循環型」です。


代表的なのは、例えば、季節循環の体系です。
季節は「季節神」と関係します。
季節の体系は4分割が代表的ですが、地域によって4とは限りません。


1年の循環の体系には、他にも、占星学のカルデアの「12宮(12星座、12ヶ月)」や、エジプトの「36デカン」、インド・中国の「二十八宿」、中国の「二十四節気」、サビアンの「365シンボル」などの体系があります。


中国の「十干」や「十二支」のように、複数年の循環の体系もあります。
ただ、どちらにも季節循環の植物の成長の意味がありますが。


時間循環と空間方向の体系は、重ねられることもあり、その場合は「水平循環」という性質を持ちます。


例えば、東南西北の象徴は、春夏秋冬の象徴とよく重ねられます。


・東=春
・南=夏
・西=秋
・北=冬


中国の「五行」も、季節や方向と重ねられて循環型の体系にもなっています。
また、「十干」や「十二支」も、方向に対応させられました。


「七曜」の体系は週を表現するものとしては循環的なものですが、本来は、惑星の体系として、垂直型の性質も持っています。




中国の占術は、主に、天や地、人を表現する循環型体系の組み合わせで行われます。


「断易(五行易)」は八卦、十二支、五行、「六壬神課」は十干、十二支、二十四節季、十二天将、十二月将、「奇門遁甲」は十干、八門、九星、八神、九宮、といった具合です。


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六壬栻盤(出典:WIKPEDIA




<垂直型>




象徴間の関係が、価値観の違いとなっているのが「垂直型」です。


多くの場合、価値観の高低は、空間的な上下や、光の明暗などと結びついています。


最も古く、かつ、世界的に普遍的な体系の一つは、天上、地上、地下という「3世界」の体系でしょう。


また、バビロニア発の「7惑星(天)」の天球の体系も垂直型です。


7天の体系は、「10天」の体系に拡張されがちです。
「10天」の場合、「7惑星天」の上につけ足されるのは、宇宙が生まれる元になる宇宙卵や、宇宙の外郭や、北極星、沈まない星座、恒星天などです。


また、元素も垂直的な体系となりました。
「5元素」の場合、アイテール(霊、虚空)・火・空気・水・土という順になります。


「惑星天」と「元素」の体系を結びつける場合は、「惑星天」を「元素」の上に置き、「元素」は月下世界の中の階層とされます。


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ルネサンス時代のロバート・フラッドによる宇宙の階層(出典:WIKIPEDIA)




「10天」の体系が生まれたのは、自然数の「10」の体系と重ねられたからでしょう。


ピタゴラス派が1-から10までの数の象徴的意味を基にした数秘術を行っていたという伝説があります。
ですが、少なくとも、ピタゴラスや初期のピタゴラス派にはそれはなかったハズです。


数の体系としては、12進数や60進数を生み出したシュメールに、非常に古く、かつ独自的な、数=神々の体系があります。
これは60=天神アンを最高として、50=嵐神エンリル、40=水神エンキ…と下り、4=牡牛神ハル、3=その妻神、といった垂直体系です。


その後、バビロニアでは、天球を含む宇宙像とパンテオンの対応づけもさなれました。


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身体上のスポットの体系である「チャクラ」の体系も垂直型です。
チャクラの数は様々だったのですが、近代になって欧米で7チャクラ説が有名になったのは、バビロニア系の聖数である7の体系に合わせたためです。




また、文字(アルファベット)も垂直型の性質を持つ象徴体系の場合があります。
ユダヤのカバラの22文字の体系が有名ですが、多くの民族に文字の象徴体系があります。


多くの場合、文字は宇宙創造と結びつけられ、すべての文字が平等ではなく、最初の文字や、いくつかの特権的な文字が考えられました。
また、すべての文字に順番がある場合もあります。


文字が数字を表すこともあるので、その場合は数の体系とも結び付けられます。




<方形型>




垂直と水平を掛け合わせた形の体系が「方形型」です。


例えば、日本語の文字や音韻は、言霊学として、50音、あるいは75音がこのように体系化されています。
子音には水平的性質、母音には垂直的性質が付与されます。


ですから、全体としては、水平*垂直(10*5、あるいは、15*5)の積算による方形型の体系です。


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15*5の言霊体系(大石凝真素美全集より)




<放射型>




垂直性と水平性が組み合わされていて、下方に至るほど分岐してべき算で多数化する体系が「放射型」です。


もっとも代表的なのは、「易経」でしょう。


「易経」の体系は、「陰/陽」の爻をいくつも組み合わされることで、放射的に多数化していきます。
ただ、「周易」の段階での爻の意味は「柔/剛」でした。


3つ組み合わせて(三爻)できたものが八卦で、八卦を2つ組み合わせたものが六十四卦です。


つまり、64の体系は(2*2*2)*(2*2*2)のべき乗放射で表現され、1(太極)-2(両儀)-4(四象)-8(八卦)-64(六十四卦)の垂直体系となります。


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ですが、八卦だけを見ると、水平型の体系となります。


易経の体系は、方向や五行など多くの体系とも重ねられました。




「エノキアン・タブレット(エノク魔術)」の体系も放射形です。


全体としては、5元素を4重にかけ合わせたシステムです。


ただし、5元素の内、アイテールだけが、他の四大元素より上位の別扱いになっています。


つまり、(1+4)*(1+4)*(1+4)*(1+4)のべき乗放射体系です。


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エノキアン・タブレット(goldendawnshop.comより)


そして、この中に、ケルビム、セフィロート、12宮、36デカン、22大アルカナ、7惑星、地占記号などの象徴体系が含有されています。




<準放射型>




密教のマンダラやヒンドゥー・タントラのヤントラの体系は、「準放射型」と言えます。
下降するほど数が増えますが、放射形のようにべき乗では増えません。
つまり、放射型と方形型の中間のような体系です。


例えば、1-4-16-64…なら放射形で、1-4-4-4…なら方形型ですが、1-4-8-16-16…といった形です。


後期密教の場合、マンダラのもととなる尊格の垂直階層は、


1 本初仏-本初仏母(守護尊-守護女尊)
2 仏-仏母
3 菩薩-女菩薩、忿怒尊-忿怒女尊、女尊、祖師
4 天部(護法尊)
5 葉女神


などとなります。


ちなみに、「時輪経」の場合、1は智恵-大楽、2は五蘊-四大、3は五根-五境、行動器官-行動、プラーナ、4は12ヶ月、5は28日と重ねられます。


また、仏の部族の水平体系は、最初に体系化された五部の体系を持つ「金剛頂経」の場合、


  部  位置 色  仏名     智恵  手印   象徴
・如来部:中央:白:大日如来  :法界性智:智拳印 :仏塔
・金剛部:東 :青:阿閦如来  :大円鏡智:触地印 :金剛杵
・宝部 :南 :黄:宝生如来  :平等性智:与願印 :宝珠
・蓮華部:西 :赤:阿弥陀如来 :妙観察智:禅定印 :蓮華
・羯磨部:北 :緑:不空成就如来:成所作智:施無畏印:羯磨金剛


となります。
ちなみに、「時輪経」ではこれが六部の体系になります。


さて、マンダラは、「金剛頂経」の場合は、


・5(1+4)仏
・16菩薩+4波羅蜜菩薩
・8(4+4)供養菩薩
・4摂菩薩


というシステムです。


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金剛界曼荼羅37尊「曼荼羅イコノロジー」田中公明より


5、あるいは、4のべき乗的部分が1度ありますが、それ以下は増加しません。


その後の経典も、システムは類似しています。


ですが、後期のマンダラの特徴は、尊格が父母仏、つまり、合体孫として、対で表現されるようになることです。


ヒンドゥー・タントラのシュリー・ヤントラの場合も同種のシステムです。


シュリー・クラ派の場合、下記のような尊格が中心から周辺に向かって配置されます。


9 最高女神トリプラスンダリー
8 3聖地女神
7 8守護女神
6 10女神
5 10女神
4 14女神
3 8女神
2 16女神
1 8母神+10シディ女神


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シュリーヤントラ(「インド密教」(春秋社)より)




ちなみに、マンダヤやヤントラは地面に描かれて儀礼が行われますが、その原初的な形態は、インディアンの砂絵に見られるような四方の精霊の体系でしょう。


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インディアンの砂絵の儀礼を紹介した本の表紙




<垂直二極-統合型>




カバラのセフィロートの体系は独特です。
ここでは便宜的に「垂直二極-統合型」と名付けます。


セフィロートは、もともと1-10の数字の垂直型体系でしたが、それに6方向+4元素の性質が重ねられて立体的体系にもなりました。


その後中世に、「生命の樹」として知られる体系になりました。
これは、垂直型でありつつも、左右の二極(峻厳/慈悲)と中央の均衡・統合という性質を持つ樹状の体系です。


上から見ると稲妻型とも、下から見ると蛇行型とも表現できます。


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「ゾーハル」の写本の生命の樹


10のセフィロートは、以下のような象徴的意味を持ちます。


1 ケテル(王冠)
2 ホクマー(知恵)
3 ビナー(知性)
( ダート(理性))
4 ヘセド(慈愛・恩寵)、ケデュラー(偉大)
5 ゲブラー(権力)、ディン(判断・厳格)
6 ティフェレト(美)、ラハミーム(慈悲)
7 ネツァハ(持続・永遠・勝利・忍耐)
8 ホド(威厳・栄光)
9 イエソド(基礎)
10 マルクト(王国)、シェキナー(光輝・住居・臨在)


セフィロートの体系には、10天、10身体部位や、4世界、3霊魂などが配当されました。


また、「生命の樹」の体系には、セフィロート間をつなぐ22の径には、22のユダヤ文字が重ねられ、さらにこれに7惑星+12宮+3元素が重ねられるなどしました。



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