本格的なタントラ仏教(密教)である「金剛乗(ヴァジュラ・ヤーナ)」は、「初会の金剛頂経」で宣言されました。
広義の「金剛頂経」は、18種の経典の総称で、これを「広本の金剛頂経」とも表現します。
狭義では、その最初の経典である「真実摂経」を指し、「初会の金剛頂経」とも表現します。
この経典は、7C後半、南インドで生まれました。
狭義では、その最初の経典である「真実摂経」を指し、「初会の金剛頂経」とも表現します。
この経典は、7C後半、南インドで生まれました。
「真実摂経」は、密教の発展段階では第3段階に当たる「ヨガ・タントラ」に属します。
しかし、広義の「金剛頂経」には、第4段階に当たる経典もあります。
しかし、広義の「金剛頂経」には、第4段階に当たる経典もあります。
広義の「金剛頂経」に属する主な経典には、「六会」の「理趣広経」があります。
この経典は生得的な快楽を肯定する母タントラにつながる経典です。
また、「九会」は、「母タントラ」に属する「サマーヨガ・タントラ」の原初的経典です。
そして、「十五会」は、「父タントラ」に属する「秘密集会タントラ」です。
この経典は生得的な快楽を肯定する母タントラにつながる経典です。
また、「九会」は、「母タントラ」に属する「サマーヨガ・タントラ」の原初的経典です。
そして、「十五会」は、「父タントラ」に属する「秘密集会タントラ」です。
<金剛乗、ヨガ・タントラ>
「真実摂経」は「金剛乗」という思想を宣言し、自分たち以前の大乗仏教を「波羅蜜乗(パラミタナーヤ)・通大乗」と呼んで区別しました。
もちろん、「金剛乗」の方が優れているとします。
もちろん、「金剛乗」の方が優れているとします。
「金剛」とは、本来は、雷であるインドラ(帝釈天)の武器の「金剛杵」のことです。
「壊すことができない悟りの智恵」を、「金剛杵」で象徴するものです。
「壊すことができない悟りの智恵」を、「金剛杵」で象徴するものです。
「金剛乗」は「真実摂経」が出発点ですが、その後、様々な経典によって発展しました。
「金剛乗」は、「ヨガ・タントラ」クラスの密教だけではなく、「無上ヨガ・タントラ」クラスの密教をも指します。
「金剛乗」は、「ヨガ・タントラ」クラスの密教だけではなく、「無上ヨガ・タントラ」クラスの密教をも指します。
「ヨガ・タントラ」クラスの「金剛乗」には次のような特徴があります。
主尊は、基本的に「マハー・ヴァイローチャナ(法身大日如来、摩訶毘盧遮那仏)」です。
「金剛杵」を仏の悟りの象徴とし、その観想を重視します。
また、欲望を否定せずに修行法(貧欲行)に転化したり、仏教以外の神などの「降伏」も特徴とします。
「金剛杵」を仏の悟りの象徴とし、その観想を重視します。
また、欲望を否定せずに修行法(貧欲行)に転化したり、仏教以外の神などの「降伏」も特徴とします。
また、「真実摂経」を継承して、五仏・五智など、様々なものを五部(五族)の体系として整理し、悟りの内容を「マンダラ」として表現します。
「マンダラ」は、客観的に言えば、水平軸と垂直軸を持つ元型的な象徴体系です。
尊格を体系的に整理したパンテオンでもあり、宇宙論です。
密教的には、煩悩のない真実の清浄な世界です。
もちろん、「マンダラ」は絵に書かれた平面的存在ではなく、立体的存在です。
絵に書かれた「マンダラ」は、基本的に中央の主尊から見える光景を平面に倒して描いたものです。
尊格を体系的に整理したパンテオンでもあり、宇宙論です。
密教的には、煩悩のない真実の清浄な世界です。
もちろん、「マンダラ」は絵に書かれた平面的存在ではなく、立体的存在です。
絵に書かれた「マンダラ」は、基本的に中央の主尊から見える光景を平面に倒して描いたものです。
密教においては、自分自身を本尊と観想する「我生起」の瞑想が重要ですが、単に尊格の象徴的なイメージ(三昧耶薩埵)を意識的に観想して作るだけではなく、そこに尊格の本質を導き入れるために、「智薩埵」の観法が生まれました。
「智薩埵」は、行者が意図せずに、勝手に動いたりします。
また、姿だけではなく、仏の意識(慢)も伴う必要があります。
そして、無念無相の「空」の認識と同時に行う「深明不二」が目指されるのは「行タントラ」を継承しています。
そして、無念無相の「空」の認識と同時に行う「深明不二」が目指されるのは「行タントラ」を継承しています。
また、観想だけでなく、手印を結び、マントラを唱えて、仏の「身口意」の3側面の清浄なあり方を体現し、仏と一体化する「三密」を特徴とするのは、「行タントラ」を継承しています。
・身密(羯磨印) :手印
・口密(法印) :マントラ
・意密(三昧耶印):仏身の観想
・口密(法印) :マントラ
・意密(三昧耶印):仏身の観想
「三密」は、元をたどれば、ゾロアスター教の3つの善、「善思」、「善語」、「善行」の影響かもしれません。
「真実摂経」では、「三密」を備えた状態を「大印」と表現します。
ですが、「大印」は、性ヨガの相手となる女性を暗示することもあります。
また、手印を「大印」と呼び、「行為(の観想)」を「羯磨印」と呼び、四印(四密)で考えることもあります。
ですが、「大印」は、性ヨガの相手となる女性を暗示することもあります。
また、手印を「大印」と呼び、「行為(の観想)」を「羯磨印」と呼び、四印(四密)で考えることもあります。
三密を備えた状態で仏と一体化するだけではなく、各印ごとに仏と一体化する行を行います。
また、観想法としては、鼻先に金剛などを観想する「微細ヨガ」、微細な金剛などを多数、空間に遍満させる「広観」、それらを鼻先に集斂させる「斂観」も生まれました。
<真実摂経>
主尊は「金剛界ヴァイローチャナ」ですが、「法身ヴァイローチャナ」、「マハー・ヴァイローチャナ」、「一切如来」(無始無終で空間に遍満する仏)などとも表現されます。
この主尊は、本来、姿を越えた存在(法身)です。
この主尊は、本来、姿を越えた存在(法身)です。
ですが、マンダラに表現されるような形を持った姿(報身)になった存在になると、「ヴァイローチャナ」と呼ばれます。
「ヴァイローチャナ」は、漢訳では、音訳で「毘盧遮那仏」、意訳で「大日如来」です。
太陽を神格化した存在なので、イラン系宗教の主神の「ミトラ」や「アフラ・マズダ」の影響があるかもしれません。
太陽を神格化した存在なので、イラン系宗教の主神の「ミトラ」や「アフラ・マズダ」の影響があるかもしれません。
「金剛界ヴァイローチャナ」は、菩薩形の「金剛薩埵」にも化身します。
さらに、忿怒形の「降三世明王」にも化身し、シヴァ神らを調伏します。
さらに、忿怒形の「降三世明王」にも化身し、シヴァ神らを調伏します。
第一章の「金剛界品」では、一切如来が、成仏前の釈迦に相当する菩薩に、「五相成身観」と呼ばれる瞑想法(成仏法)を教え、釈迦はこれによって成仏します。
「五相成身観」は、5段階の観想法ですので、従来の観法(空の観察)とは異なる行法です。
「月輪のようなもの」→「月輪」→「金剛杵」→灌頂を受け「金剛杵を堅固に」→加持を受け「如来の姿」に、とマントラを唱えながら順次観想をして、自身をヴァイローチャナと一体化します。
「月輪のようなもの」→「月輪」→「金剛杵」→灌頂を受け「金剛杵を堅固に」→加持を受け「如来の姿」に、とマントラを唱えながら順次観想をして、自身をヴァイローチャナと一体化します。
従来の止観とは異なる、このような象徴の操作を通して悟れるとする主張は、革命的です。
*「五相成身観」に関しては、姉妹サイトの記事を参照してください。
「五相成身観」は、後に、「五現等覚」や「生起次第」に発展します。
「五相成身観」によって悟った釈迦は、須弥山の頂に降りて、その悟りの内容を37尊の「マンダラ」として示します。
悟りの内容が、四諦や十二縁起、四法印、空などではなく、「マンダラ」であるという点でも革命的です。
悟りの内容が、四諦や十二縁起、四法印、空などではなく、「マンダラ」であるという点でも革命的です。
「真実摂経」は、様々な存在を、5つの部に対応させ、5部に体系化しました。
・如来部:中央:白:大日如来 :法界性智:智拳印 :仏塔
・金剛部:東 :青:阿閦如来 :大円鏡智:触地印 :金剛杵
・宝部 :南 :黄:宝生如来 :平等性智:与願印 :宝珠
・蓮華部:西 :赤:阿弥陀如来 :妙観察智:禅定印 :蓮華
・羯磨部:北 :緑:不空成就如来:成所作智:施無畏印:羯磨金剛
・金剛部:東 :青:阿閦如来 :大円鏡智:触地印 :金剛杵
・宝部 :南 :黄:宝生如来 :平等性智:与願印 :宝珠
・蓮華部:西 :赤:阿弥陀如来 :妙観察智:禅定印 :蓮華
・羯磨部:北 :緑:不空成就如来:成所作智:施無畏印:羯磨金剛
*最後の項目は三昧耶形です
5部の内、如来部、金剛部、蓮華部は、第2クラスの密教である「大日経」にも存在します。
マンダラの尊格は、5仏、16大菩薩、4波羅蜜菩薩、8供養菩薩、4摂菩薩の37尊です。
五仏は、「大日経」では5大元素と対応づけられていましたが、「摂真実経」では、「五智如来」と呼ばれるように、「五智」と対応づけられています。
5つの内4つの智恵は、唯識思想から取り入れたもので、「阿頼耶識」、「末那識」「意識」「前五識」が転依(浄化)したものです。
5つの内4つの智恵は、唯識思想から取り入れたもので、「阿頼耶識」、「末那識」「意識」「前五識」が転依(浄化)したものです。
4波羅蜜菩薩は、女性の菩薩で、部母と考えられました。
8供養菩薩は、大日如来と4如来が互いに供養する象徴で、供養天女の姿で描かれます。
4摂菩薩は、四方の門の門衛であると共に、人々を招き入れて智恵に導く存在です。
8供養菩薩は、大日如来と4如来が互いに供養する象徴で、供養天女の姿で描かれます。
4摂菩薩は、四方の門の門衛であると共に、人々を招き入れて智恵に導く存在です。
また、37尊の三昧耶形を「陀羅尼(明妃)」、37尊の忿怒形を「明王」、変化観音を37尊が蓮華部の菩薩の変化した姿として、マンダラの中に取り込み、すべてを体系化しました。
それを、通常の姿で描かれ37尊のマンダラである「大マンダラ」以外に、様々なマンダラとして表現しました。
・三昧耶マンダラ:三昧耶(尊格の持ち物などの象徴)の形で陀羅尼である女性尊を描く
・法マンダラ :禅定する尊格の心臓に金剛など象徴を描く
・羯磨マンダラ :菩薩を供養天女の姿で描く
・四印マンダラ :簡略形
・一印マンダラ :簡略形
・法マンダラ :禅定する尊格の心臓に金剛など象徴を描く
・羯磨マンダラ :菩薩を供養天女の姿で描く
・四印マンダラ :簡略形
・一印マンダラ :簡略形
最初の4種のマンダラは、「身密(手印)」、「口密(マントラ)」、「意密(観想)」、「作用(供養という行動)」に対応します。
これら6種のマンダラは、マンダラのカテゴリであり、それが各部の尊格として描かれ、「真実摂経」全体では、28種のマンダラが説かれます。
日本でよく知られる九会の金剛界マンダラは、これらを組み合わせを元に作られたものです。
日本でよく知られる九会の金剛界マンダラは、これらを組み合わせを元に作られたものです。