占星学的宇宙論と神々

オリエント最初の巨大帝国はメディアとアケメネス朝に始まるペルシャ系の帝国です。
その後も中世にいたるまでいくつかのペルシャ系の帝国が繁栄しました。
ペルシャの宗教はイスラム教が生まれるまでのオリエント世界に大きな影響を与えました。


また、古代世界の首都であったバビロニアは、星辰信仰、占星学が盛んで、階層的な宇宙論を生み出して、古代世界に大きな影響を与えたました。
バビロニアは、ペルシャの支配を受け、ペルシャの宗教(救済神話)とバビロニアの占星学が習合し、オリエント神智学の原型を生み出しました。

これはトルコの都市ミレトスやタルキス、エジプトの都市アレキサンドリアを通じて、ギリシャ・ローマ世界にも大きな影響を与えました。
実際、ユダヤ、キリスト教とその神秘思想はペルシャの宗教とバビロニアの神智学からの強い影響を受けました。
また、ギリシャ、ヘレニズム、ローマ期の哲学も、オリエントを起源とした思想に抽象的な表現を与えたものです。



<12星座と12宮>

メソポタミアの星座の起源は、有史以前のシュメールに遡ります。

メソポタミアでは悪い前兆を見つけるために天体観測を行って記録しました。
前兆占い文書の「アヌマ・アヌ・エンリル」は、BC17Cには成立しました。

おそらくこの頃まで遡れるバビロンの新年祭では、12星座ではなく、各月3星座の36星座が語られました。
エジプトの36デカンと似ています。

「12星座」の概念の成立がいつ頃かは不明ですが、各星座は次のような形でした。

例えば、牡牛座は、「天の牝牛」と呼ばれ、女神イナンナを表現しました。
山羊座は、「山羊魚」と呼ばれ、人魚のように下半身が魚で、エア神を表現しました。
水瓶座は、「偉大なるもの」と呼ばれ、エンキ神を表現しました。
射手座は、半人半獣の「パビルサグ」の姿(下半身は翼の生えた馬、尾はサソリの尾、後頭部に犬の頭がある)で、ニヌルタ神を表現しました。

また、「12宮」の概念の成立年代も不明ですが、それが確実なのはBC5Cです。
発見されている最古のホロスコープもこの頃です。


<階層的天球宇宙像と神々>

はっきりとした年代は分かりませんが、バビロニアでは、近代に至るまで東西の思想に絶対的な影響を与えた階層的な天球で恒星される宇宙モデルが生まれました。


この宇宙像では、地上世界を、7惑星と恒星の合わせて8層の天球が取り巻いています。
天球は下から月の天球、金星の天球、水星の天球、太陽の天球、火星の天球、木星の天球、土星の天球、そして恒星の天球です。


月の天球の下は月下界と呼ばれます。
太陽の天球が7つの惑星の天球の中心にあります。
天球は金属の外殻で囲まれていると考えられました。
天球の外側は無限の神的な世界です。


もともと、メソポタミア、バビロニアの神々の多くは天体と結びつけられていました。
ですが、この階層的な天球の宇宙像が誕生すると、神々がはっきりと宇宙像と対応付けらるようになりました。
その対応は、例えば以下のようなものだったでしょう。

占星学的宇宙論
バビロニアのパンテオン
天球の外側
アプスー/ティアマト
天球の創造神
ラフム/ハフム
-----------------
天球の外殻
宇宙卵=ムンム
恒星天
アヌ(アンシャル)
土星天
カイマーヌ
木星天
マルドゥク
火星天
ネルガル
太陽天
シュマシュ
水星天
ナブー
金星天
イシュタル
月天
シン
-----------------
月下界
エンリル
地上
アントゥ(キシャル)
-----------------
地下
ネルガル

また、後には、ペルシャの宗教の影響を受けて、これらの神々がペルシャの神々と対応づけらました。


また、後のギリシャの記録からは、バビロニアには生滅を繰り返す宇宙観があったのではないかという推測もされています。

この記事へのコメント


この記事へのトラックバック