シーア派のミスラ神話

イスラムによってマズダ教が衰退させられ、ミスラ教がイスラムと習合したことで、シーア派の中で新たなミスラに関する神話が生まれました。
それは以下のような神話です。


長い年月の間、人々は唯一なる至高神ミトラを崇めてきましたが、ゾロアスター、すなわち「黄金の星」と名乗る者が現れて、風変わりな教えを説き始めました。
永遠時間の神ズルワン(母ズルワーン)は無限光(父ズルワーン)を作り、無限光はアフラ=マズダ(原人アダム)を生もうとしました。
それには火が必要だったので、無限光はミスラの火を使ってしまいました。


火を失ったミスラは主宰神として天地を治めることができず、アーリマンにアフラ・マズダと戦うように命じ、いつか必ず戻ると言い残して、しばらくの間、身を隠すことにした。
アフラ・マズダを崇拝する者たちは、ミトラは二度と戻らないと言って、アーリマンとミスラの勢力を攻撃しました。
ですが、アラビアの地に預言者ムハンマドが現れて、聖剣とコーランのただの一撃でマズダ教を打ち滅ぼしました。


こうしてミスラは帰って来ました。
ミスラは「時の主」と名乗り、新しい周期が始まったのだと告げて、新しい教え(イスラーム・シーア派)を説きました。
マズダ教徒から悪魔視されたアーリマンは、神の第一の天使として、孔雀の羽のような光につつまれて誇らしげに光り輝きました。


また、異説を説く神話もいくつかあります。
それは以下のような神話です。
至高神ミトラは自らの内にアフラ・マズダとアーリマンの両方の性質を持った、善と悪、光と闇のすべてを内に秘めた偉大な神だったのに、ゾロアスターの教えで光と闇が分離し、アフラ・マズダとアーリマンに分かれてしまったというものです。


アーリマンは本来、両義的な性質を持つ文化英雄的な部族神だったのを、マズダ教によって悪神化されたのです。
ですが、ミスラ派はアーリマンの本来の両義的な性質を受け継いでいます。
また、ミスラがマズダとアーリマンの2元性を合わせ持って調停するという点は、 ズルワン主義の初期からの教説を忠実に受け継いでいます。
 

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