神智学のハイアラーキーとイニシエーション

アリス・ベイリーとアディヤール派のリードビーターが語る、ハイアラーキー(シャンバラの白色同胞団の聖職組織)の構造、そして、その位階に関わるイニシエーションについて、まとめます。

このテーマは、ブラヴァツキー夫人の著作や文章にも語られますが、最初に体系的に語ったのは、アリス・ベイリーの1922年の著「イニシエーション」です。
ですが、これは、神智学協会本部の機関誌「セオソフィスト」の掲載を拒否、中断されたものです。

一方、リードビーターがこのテーマについて語った主著は、クリシュナムルティ運動の最中で、彼の覚醒があったとされる1925年に出版された「大師とその道」です。


<ベイリーのハイアラーキー論>

アリス・ベイリーは、「シャンバラ・ハイアラーキー」には、3つの主要センターがあるとします。
「シャンバラ」、「ハイアラーキー」、そして、「人類」です。
それぞれは、第1光線(意志と力)、第2光線(愛と智恵)、第3光線(活動的知性)の影響を受けています。

また、「シャンバラ」から「ハイアラーキー」の見習いである「人類」までを含めて、「惑星ハイアラーキー」と総称します。

「シャンバラ」は、ゴビ砂漠上空のエーテル界に存在し、大評議会を組織しています。
そして、「惑星ロゴス」を反映する「意志」のエネルギーを放射しています。
また、地球の生命の進化に向けての「大目的の作成」を行います。

「シャンバラ」のトップは、「世界主(世界の王)」の「サナート・クマーラ」です。
彼は、地球のすべての進化の監督者であり、大評議会を主宰し、すべてのイニシエーションに参加する、エーテル界にいる存在です。

「サナート・クマーラ」の下には、彼を補佐する3人の「活動の仏陀(クマーラ)」がいます。
また、彼らとは別に3人のクマーラがいますが、彼らは姿を隠した存在です。

「シャンバラ」には、他に、「4人のカルマの主」がいます。
彼らは、人間の運命の分配、アーカーシャの記録を行っています。


「シャンバラ」と「ハイアラーキー」の間を、「ニルマナカーヤ」と呼ばれる存在がつないでいます。
彼らは、アートマ界においてグループで瞑想して、「シャンバラ」の「大目的」を「大計画」に具体化して「ハイアラーキー」に提示します。

ちなみに、ベイリーは、瞑想を、高次な存在を低次な世界にもたらす創造的な作業と考えます。
また、個人瞑想は集団瞑想のための準備であるとします。

「ハイアラーキー」は「愛と智恵」のセンターであり、「人類」を悪から守る防護壁としての役目を負っています。
そして、大計画に基づいて指導を行い、イニシエーションの準備をさせ、「人類」の意識を目覚めさせる手助けを行っています。

「ハイアラーキー」には、7光線に対応する7つの組織と人がいます。

第1光線に対応する組織のトップは、「マヌ(人祖)」です。
政治的・物質的領域を担い、人種のタイプと形態の基礎を築き、監督します。
彼の下には、ジュピター大師、モリヤ大師(秘教学派の長)がいます。

第2光線に対応する組織のトップは、「世界教師(キリスト)」であり、現在はマイトレーヤが務めています。
宗教的・霊的領域を担い、「ハイアラーキー」を統括し、人間の霊的運命を導きます。
彼の下には、「ヨーロッパ人の大師」と呼ばれる大師、クートフーミ大師、ジュワル・クール大師がいます。

第3光線に対応する組織のトップは、「文明の主」と呼ばれる「マハーチョーハン」です。
科学的・知的領域を担い、文明の創造を行なっています。
彼の下には、「ヴェネチア人の大師」と呼ばれる大師がいて、さらに下位の組織を統括する組織の長を務めています。

その下位組織は、第4~第7光線に対応する4つの下位組織です。
この4組織にはそれぞれ、セラピス大師、ヒラリオン大師、イエス大師、ラコッツィ大師(サンジェルマン大師)がいます。
第3光線の組織の全体には、7つの光線と7人の「マハーチョーハン」が長となっている7つの主要アシュラムと、42の二次的アシュラムがあります。
これらアシュラムは、祈願の集団瞑想を行っています。


「ハイアラーキー」と「人類」をつなぐ存在として、「世界奉仕者の新団体」があります。
彼らは、「ハイアラーキー」と一般大衆の媒介者であり、数百万人が活動しています。

「人類」は、「活動知性」のセンターです。
鉱物、植物、動物の3王国(世界)への霊的エネルギーの分配・媒介も行っています。

「人類」には、一般の人間の上に、ハイアラーキーのマスターに対する「見習い」がいて、その上に「弟子」がいて、さらにその上に第1から第4のクラスのイニシエート達がいます。

(シャンバラ・ハイアラーキーと7光線の対応)
1:シャンバラ
  世界主→活動の仏陀→カルマの主
2:ハイアラーキー
 -1:マヌ
 -2:世界教師
 -3:文明の主 → 4・5・6・7
3:人類
  イニシエート→弟子→見習い→一般人


また、神智学では、地球上の人間のハイアラーキーとは別に、全部で12の「創造的ハイアラーキー」があり、進化の手助けをしているとします。
そのうち、4つはすでに役割を終え、1つは終えつつあり、残り7つが影響を持っています。

ベイリーは、「創造的ハイアラーキー」に関しても、7光線の対応があるとします。
ただし、彼女の創造的ハイアラーキーの捉え方は、アディヤール派とは異なるようです。

(ハイアラーキー)     (光線)(階層)
第1創造ハイアラーキー   :3 :
第2創造ハイアラーキー   :4 :
第3創造ハイアラーキー   :5 :
第4創造ハイアラーキー   :6 :
第5創造ハイアラーキー   :7 :キリスト覆う
神聖な炎のハイアラーキー  :1 :ロゴス界
神聖な建設者のハイアラーキー:2 :モナド界
下位の建設者のハイアラーキー:3 :アートマ界
人間ハイアラーキー     :4 :ブッディ界
人間のパーソナリティ    :5 :メンタル界
月の主達のハイアラーキー  :6 :アストラル界
エレメンタルのハイアラーキー:7 :物質界


<ベイリーのイニシエーション論>

「イニシエーション」というのは、人が意識の拡大、成長、進化をしていくために通る試験、儀式であり、上位の「ハイアラーキー」の存在がそれを主宰します。
「イニシエーション」を通過することで、「ハイアラーキー」の位階が変わります。

ベイリーの、最初の著「イニシエーション」で語られる7つのイニシエーションは、下記のようにまとめられます。
いくつかのイニシエーションは、イエスの生涯との対比で説明されています。

(チャクラ)(主宰者) (階層)  (イエスの人生の対応)
1:頭頂 :世界教師:物質界    :馬屋での誕生
2:心臓 :世界教師:アストラル界 :ヨルダン川での洗礼
3:喉  :世界主 :低位メンタル界:
4:臍下 :世界主 :高位メンタル界:十字架上の磔刑
5:基底部:世界主 :ブッディ界  :
6:   :    :アートマ界  :
7:   :惑星霊 :モナド界   :

また、ベイリーは、人間の成長にとっての「3つの障害」を語ります。
「マーヤー」は、エーテル体の障害で、エーテル体にコントロールされて、それを自分であると思い込んでしまいます。
「グラマー」は、アストラル体の障害で、感情的な反応による惑わしを真実と思い込んでしまいます。
「イリュージョン」は、メンタル体の障害で、新しいアイディアを他と切り離して、全体的な理解を失ってしまいます。

第1イニシエーションは、肉体の高い統制、「マーヤー」の克服が求められます。
次のイニシエーションまでは、通常、多くの転生が必要とされます。

第2イニシエーションでは、アストラル体の高い統制、「グラマー」の克服が求められます。
次のイニシエーションまでは、同じ生涯でも可能です。

第3イニシエーションでは、メンタル体の高い統制、「イリュージョン」の克服が求められます。
このイニシエーションを経て、個性と魂が一体化、モナドと接触、ハイアラーキーのメンバーと交流が可能になります。

第4イニシエーションでは、「パーソナリティ(コーザル体)」の放棄が求めれます。
このイニシエーションを経て、「モナド」と自由に対面し、「モナド」が直接個性に働きかけることが可能になります。

第5イニシエーションでは、地球における学びが終了します。
人間から見て完全な存在、大師のレベルになります。

ですが、望むならば後2つのイニシエーションを受けることができます。
第6イニシエーションでは、惑星連鎖の法則を行使できるようになり、第7イニシエーションでは、太陽系の法則を行使し、太陽ロゴスの力が流れるようになります。

第1から第5のイニシエーションは、メンタル界で、第6イニシエーションはブッディ界で、第7イニシエーションはアートマ界で受けます。

第5イニシエーションを経た人間は、次に進むべき方向として「7つの道」から選択します。
地球のハイアラーキーでの奉仕、様々な磁気的な力を行使して働く、惑星ロゴスになる訓練、シリウスとプレアデスに行く、自らの光線に留まって働く、ロゴス自身が辿る道、ロゴスより高い存在の子となる、です。

しかし、晩年の著「光線とイニシエーション」で語られる9つのイニシエーションは、下記のようにまとめられます。
この著では7光線と対応づけられるようになりますが、チャクラや階層の対応は、著「イニシエーション」から変わっています。

(光線) (チャクラなど)  (階層)  (名称)
1:第7光線 :仙骨     :物質界   :誕生
2:第6光線 :臍下     :アストラル界:洗礼
3:第5光線 :眉間     :メンタル界 :変容
4:第4光線 :心臓     :ブッディ界 :放棄(磔刑)
5:第1光線 :基底     :アートマ界 :啓示(復活)
6:第3光線 :喉      :モナド界  :決断
7:第2光線 :頭頂     :ロゴス界  :復活
8:第4-7光線:ハイアラーキー:惑星系   :移行
9:第1-3光線:シャンバラ  :太陽系   :拒絶


<リードビーターのイニシエーション論>

リードビーターが「大師とその道」で語るシャンバラ・ハイアラーキーの組織と7光線の対応は、ベイリーと基本的に変わりません。
ですが、イニシエーションに関しては、かなりの違いがあります。

リードビーターは、ブラヴァツキー夫人を継承して、アビダルマ仏教の修道論を取り入れて、イニシエーションを語ります。

彼の語るイニシエーション論は下記ようにまとめられます。

   (位階)         (障害) 
1:預流(ソーヴァン)     :三結
2:一来(サカダーガーミン)  :五下分結
3:不還(アナーガーミン)   :五下分結
4:阿羅漢(アラハット)    :五上分結
5:アデプト、無学道(アセーカ)
6:チョーハン
7:マヌ、世界教師、マハーチョーハン
8:活動的仏陀
9:世界主

このように、リードビーターはアビダルマ仏教の修道論を借りて、位階は四沙門で、障害は三結と十結で語ります。

第1イニシエーションを経ると、高級自我と低級自我が一体になり、ブッディに達して一体性を理解できるようになります。

第2イニシエーションを経ると、一時的なアストラル体(幻影体)を使って活動し、ブッディを肉体にもたらすことができるようになります。

第3イニシエーションには、高次メンタル界の諸力の統制が必要で、「アヴィーチ(波のない)」という意識状態の体験ができるようになります。
アビダルマ仏教の「滅尽定」のことでしょうか。

第4イニシエーションを経ると、「涅槃(アートマ界)」に入ることができるようになります。
ここにと到るまで、7生が必要とされます。

第5イニシエーションは、地球における学びの終了です。
前のイニシエーションからここに到るまで、やはり7生が必要とされます。

この後は、涅槃に入って時に法身をまとう、霊的期間に入って報身をまとう、応身をまとって霊力の宝庫の一部になる、ハイアラーキーのメンバーに残る、次の連鎖の準備をする、天使・デーヴァとして進化する、太陽系のどこかでロゴスの奉仕する、という「7つの道」の選択があります。


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