神智学の7光線理論と秘教占星学

BC2Cにシリアでマギのマクシムスらによって、ズルワン主義=ミトラ教の宇宙論・占星学理論として作られたのが、7光線理論です。
これは「マグサイオイ文書」などに記されています。
また、この理論は、マニ教、サビアン教に継承されました。

これは宇宙の創造・進化を司る根源的な7つの原理である7光線があるとする理論です。
第1~3光線は最も根源的な光線で、第4~7光線は第3光線から派生します。

ブラヴァツキー夫人は、7光線については、一言言及する程度で、詳細は述べていません。
ですが、夫人は、神智学協会に占星学部門を設立し、神智学独自の秘教占星学が生まれました。

アリス・ベイリーは、神智学の教義、そして、秘教占星学を7光線理論を基礎に独自に発展させました。
また、アディヤール派のリードビーターも、少しですが独自の7光線理論を展開しました。


<アリス・ベイリー>

アリス・ベイリーは、1880年に、マンチェスターの熱心な伝統的キリスト教の家庭に生まれました。
彼女は聖職者の夫と結婚してアメリカに渡りました。

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友人の誘いをきっかけに神智学に出会って、1917年に協会に、そして、翌年にはエソテリック・セクション(ES)に入会しました。
1919年には、アメリカの協会の事務官の夫と再婚し、彼女は地方雑誌の編集長などになりました。

同年、ベイリーに、ジュワル・クール大師からテレパシーなどでの接触が始まったとされます。
ただ、彼女がジュワル・クール大師の名前を公開したのは、彼女が亡くなる直前で、それまでは、匿名のチベット人で、モリヤ大師やクートフーミ大師を助ける弟子とされていました。
そして、ベイリーは、彼から伝えられた教えを続々と出版していきます。

ベイリーが最初に出版したのは、1922年の「イニシエーション」です。
この書の内容は、白色同胞団(シャンバラ・ハイアラーキ―)の組織とイニシエーションの階梯を7光線理論と関係付けながら体系的に説いたものです。
最初、この文章はインドの協会本部が発行する機関誌「セオソフィスト」に掲載されましたが、批判が起き、その後の掲載はなくなりました。

それでベイリーは、1923年に神智学協会を離れて「アーケイン・スクール」を設立し、通信教育などに努めました。

1925年には「シークレット・ドクトリン」の続編という「宇宙の火」を発表しました。

1947年には「キリストの再臨」を発表し、キリストが自分自身、肉体で再臨することを決定したと表明し、神智学協会のメシアニズムを復活させました。
彼女はキリストによるクリシュナムルティの訓練が中止になったのは、過剰に盲目的に献身するメンバーによって歪められたことが理由だと言っています。

1936年から1960年にかけては、7光線理論を基にした「秘教心理学I、II」、「秘教占星学」、「光線とイニシエーション」などの5冊のシリーズを出版しました。

その他にもジュワル・クール大師由来の書は多数あり、アリス・ベイリー自身の著作も出版されています。

ベイリーは、ブラヴァツキー夫人が伝えたのは「準備的な教え」であり、自分が伝えているのは「中間的な教え」であり、また、1975年以降には放送メディアを使った「啓示的な教え」がなされると予言していました。

また、彼女は、「天秤座の時代」、「ニューエイジ」という言葉を使って新しい時代が始まっているとも主張し、これは70年代西海岸のニューエイジ運動にも影響を与えました。

古い「魚座の時代」は、第6光線が主導し、自我の確立、抽象的理想、権威に従うことが特徴であり、新しい「天秤座の時代」は、第7光線が主導し、グループ、多様な理想の包括、魂に従い自立することが特徴だと言っています。
クリシュナムルティ運動の失敗の理由とも整合します。


<ベイリーの7光線理論>

ベイリーは、第1~第3ロゴスに対応する主要な3光線を、「様相光線」と表現し、次のような性質を持っているとしました。

1:意志と力
2:愛と智恵
3:活動的知性

そして、第3光線から発生する4つの光線を、「属性光線」と表現し、下記のような性質を持っているとしました。

4:調和と美
5:具体的知識
6:献身と理想主義
7:儀式的秩序、魔術

7光線を3と4に分ける思想は、ヤザダ教の7大天使に関わるクーニー・クァーフ論などがあります。

7光線は、まず、大熊座7星、プレアデス7星、シリウスを通して、次に、12星座や太陽、惑星、地球などを通して、我々に伝わります。

7光線は、第1、第2、第3のロゴスによって、星座と惑星の伝播経路が異なります。

(神聖惑星)(非神聖惑星)(第1ロゴス)(第2ロゴス)(第3ロゴス)
1:ヴァルカン:冥王星  :牡羊座   :山羊座  :獅子座
2:木星   :太陽   :双子座   :魚座   :乙女座
3:土星   :地球   :蟹座    :山羊座  :天秤座
4:水星   :月    :牡牛座   :射手座  :蠍座
5:金星   :なし   :獅子座   :水瓶座  :射手座
6:海王星  :火星   :乙女座   :魚座   :射手座
7:天王星  :なし   :牡羊座   :山羊座  :蟹座    

また、時代や国、そして、個人の「魂(高級自我)」や「パーソナリティ(低級自我)」は、それぞれ、7光線のうちの特定の光線に支配・主導されます。

大きなレベルでは、現在の太陽系は第2光線に主導されています。
また、先に書いたように、古い「魚座の時代」は第6光線が主導し、新しい「天秤座の時代」は第7光線が主導するようになっています。

最終的に、7光線はチャクラを通して我々の中に入ります。
神智学の教義では、チャクラは、7光線の高い次元からの力を受け取る器官です。

ベイリーは、インドの一般的な7つのチャクラに、西洋の秘教の伝統である脾臓のチャクラを加えて、8つのチャクラを数え、その7光線との対応を書いています。
頭頂チャクラを別格として、これを通して、その下の3つのチャクラに3つの主要光線が送られるとします。
ただし、上部のチャクラが働いているのは、イニシエートだけで、一般の人間は下4つのチャクラだけです。

1-3:頭頂のチャクラ
1 :眉間のチャクラ
2 :喉のチャクラ
3 :心臓のチャクラ
4 :脾臓のチャクラ
5 :臍下のチャクラ
6 :仙骨のチャクラ
7 :基底部のチャクラ

また、ベイリーは、著「イニシエーション」では、シャンバラ・ハイアラーキ―の組織、メンバーと7光線の関係を説明し、著「光線とイニシエーション」では、9段階のイニシエーションと7光線の関係を説明しました。
こられに関しては別項を参照ください。


<神智学の秘教占星学とベイリー>

神智学には、「秘教占星学(サビアン占星学)」の流れがあります。

ブラヴァツキー夫人の依頼によって、アラン・レオがイギリス神智学協会の占星学部門を設立し、「秘教占星学」の基礎を築きました。
そして、ロスアンゼルス支部ではマーク・E・ジョーンズが「秘教占星学」を発展させました。
ベイリーは、それらを継承して「秘教占星学」を独自に発展させました。

「秘教占星学」は、カルデア・ミトラ(マギ)系、サビアン教の占星学を継承しながら、神智学の教義や、当時の天文学を取り入れながら、現代に適合するように構築したものです。

ジョーンズは、吉凶を判断するのではなく、各自の性向と未来の選択の方法として「秘教占星学」を考え、1度ごとのシンボルを使用し、それを「サビアン・シンボル」と表現しました。

ベイリーは、従来の占星術は、人間の「パーソナリティ」を分析するものだけれど、新しい時代においては、個人の「パーソナリティ」は克服されていくので、これからは個人の「魂」を分析する新しい「秘教占星学」が必要だと言います。

そして、ベイリーは、従来の一般人の「パーソナリティ」を対象にした占星学、弟子とイニシエートの「魂」を対象にした秘教占星学、さらに、ハイラーキーレベルの「モナド」(?)を対象にした秘教占星学のそれぞれにおける、星座と支配星、光線の対応を提示しました。

下記のような形です。

(星座)(パーソナリティ)  (ソウル)      (モナド)
牡羊座:火星・第6光線 :水星・第4光線    :天王星・第7光線
牡牛座:金星・第5光線 :ヴァルカン・第1光線 :ヴァルカン・第1光線
双子座:水星・第4光線 :金星・第5光線    :地球・第3光線
 :     :        :         :
魚座 :木星・第2光線 :冥王星・第1光線   :冥王星・第1光線 


<チャールズ・W・リードビーター>

リードビーターは、1847年にイギリスのまじめなキリスト教徒の家庭に生まれました。
両親はオカルティズムにも興味を持っており、彼はブルワー・リットンの小説を愛読して育ちました。

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彼は牧師になりましたが、シネットの著作をきっかけとして、1883年に神智学協会に入会しました。
彼はクートフーミ大師の弟子になることを志願する手紙を書き、返事を受け取ったとされます。
セイロンで仏教に改宗した後、インドでブラヴァツキー夫人の秘書的な仕事に勤めました。
1895年に、ロンドンでアニー・ベザントの信頼を得て、神智学協会のヨーロッパ支部の副幹事長、副書記になりました。

その後、彼は、古代史や原子構造、協会員の過去生などを霊視によって解明して発表するなど、透視をもとにした教義の整備に取り組みました。

1906年に、リードビーターは、協会の少年を指導する際に、マスターベーションを強要したという告発を受けて、一時、協会からの脱退を余儀なくされます。
ですが、ベザントの力で復帰した後、1909年にクリシュナムルティを見出して、神智学協会のメシアニズムを主導しました。
ですが、少年への悪戯のうわさが絶えず、1916年頃、オーストラリアに移住しました。

著作には、1988年の「透視力」、1901年の「想念形態」、1925年の「大師とその道」、1927年の「チャクラ」など多数があります。


<リードビーターの7光線理論>

アリス・ベイリーの後を受けて、リードビーターもジュワル・クール大師から伝えられたとして、「大師とその道」で7光線理論について書いています。

光線の性質などは下記の通りです。

   (特徴)         (魔力)   (宗教)     (手段)
1:フォーハット(生命力) : ―     :バラモン教    :意志
2:智恵          :ラージャ・ヨガ:仏教       :意志
3:アーカーシャ(適応性) :占星学    :カルデア系    :メンタル体
4:ホーラスの誕生(美と調和):ハタ・ヨガ  :エジプト系    :エーテル体
5:火(科学)       :錬金術    :ゾロアスター系  :アストラルライト
6:神の化身(信仰)    :バクティ・ヨガ:キリスト教、カバラ:祈り
7: ― (礼拝)     :儀式魔術   :自然崇拝     :魔術

「ホーラスの誕生」については不明としながらも、自然な作用・相互作用の2力(例えば男女)を用いることに関わることとします。

また、リードビーターは、周期的に時代を支配する光線が変わり、現在は、第6から第7光線に変わりつつあると書いています。

リードビーターも、ベイリー同様、シャンバラ・ハイアラーキ―の組織、メンバー、9段階のイニシエーションと7光線を関係づけていますが、こられに関しても別項を参照ください。

リードビーターはチャクラを重視して、7つのチャクラを神智学の体系に取り込みました。
彼は、西洋の秘教に従がって、脾臓のチャクラを認め、その代わりに陰部のチャクラを数えません。
ですが、彼の著「チャクラ」では、7光線理論とは関係づけていません。


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