シュタイナーの人間の本質と霊界の階層

ルドルフ・シュタイナーは、人間の9本質(7本質)や、霊界の階層構造について、1904年の「神智学」、1906年の「神智学の門前にて」、1907年の「薔薇十字会の神智学」、1910年の「神秘学概論」などでまとめて述べています。

この項では、ルドルフ・シュタイナーの人間本質論と霊界構造論について、まとめます。


<人間の9本質>

シュタイナーは、下記のように人間の9本質を考えます。

・霊
1 霊人(アートマ) :インツゥイツィオーン認識(合一的直観)
2 生命霊(ブッディ):インスピラチオーン認識(霊聴的霊感)
3 霊我(マナス)  :イマギナチオーン認識(霊視的想像力)
・魂
4 意識魂       :霊我と一体になった魂
5 悟性魂(自我・私) :覚醒意識(人間的・対象的意識)、思考力 
6 感覚魂       :アストラル体と一体になった魂
・体
7 アストラル体(魂体):夢の意識(動物的意識)、感覚・感情
8 エーテル体(生命体):睡眠意識(植物的意識)、形成力
9 肉体(物質体)   :昏睡意識(鉱物的意識)

3分説では、1から3が「霊」、4から6が「魂」、7から9が「体」です。

そして、4と3は一体で、6と7も一体なので、全部で7本質となります。

また、5が「自我」だと言う場合、この「自我」は日常的な「自我」ですが、目覚めた「自我」は、5と4が一体の「自我」と捉えられます。

また、5の「自我」を中心にして、上下が対象の構造になっています。
つまり、「自我」は7から9を感覚によって知覚しそれを言語化し、1から3を直観によって知覚しそれを言語化します。

そして、7、8、9は、それぞれに、3、2、1が変化したものであるとも言うことができます。

「自我」を3「霊我」で満たすと、それが7「アストラル体」を照らし、それによって「自我」が「アストラル体」を支配することで、そこに「霊我」が現れるのです。
つまり、「アストラル体」を意識化して働きかけることで、その部分が「霊我」になるのです。
こうして、「アストラル体」は変化していない部分と、変化した部分(霊我)から構成されるものになります。

変化させることはより難しくなりますが、2と8、1と9の関係も同様です。

この上下対称性は、ブラヴァツキー夫人の神智学にはありません。
過去の神智学では、唯一、プロクロスときわめて類似しています。
ただ、シュタイナーがプロクロスについて語っているのを知りませんし、プロクロスには下位のものが上位のものに変化するという関係はないと思われます。


「魂」は「体」を通した「体験(印象)」を「表象」に作り変え、それを「霊」に受け渡すと、「霊」はそれを「能力」に変換して成長します。

また、シュタイナーは、「人間は思考存在であって、思考から出発するときにのみ、認識の小道を見つけることができる」と言い、「悟性魂」が行う「思考」を重視します。
ですが、単なる「抽象的思考」は超感覚的認識の息の根を止めると言います。
そうではなく、「生きた思考」が、超感覚的認識の土台を築くのです。

超感覚的認識というのは、「魂」、「霊」の諸感覚で、それぞれ、魂的、霊的存在を直接、知覚します。

思考を「生きた」ものにするには、外界に対して偏見を排して帰依する態度で、自分自身を空の容器にして、事物や出来事が自分に語りかけてくるように、外部のものに思考内容を作り出させることが必要です。

シュタイナーは、霊界の法則が思考存在としての私自身の法則と一致している時、はじめて私は霊界の法則に従うことができる、と言います。
そのような「魂」の中の不死なる部分、真・善を担うのが「意識魂」です。

そして、「私」として生きる霊は、「自我」として現れるから「霊我」と呼ばれます。

また、独立した霊的人間存在が「霊人」で、「霊人」に働きかける霊的生命力、エーテル霊が「生命霊」です。

ちなみに、動物の「自我」はアストラル界に1つの種類の動物の1つの群魂という形で存在します。
同様に、植物の「自我」は低次の神界に、鉱物の「自我」は高次の神界に存在します。


<夢と睡眠と死後>

睡眠時、「自我」と「アストラル体」は、「エーテル体」と「肉体」から離れます。
離れても、結びつきは残ります。
睡眠時の「アストラル体」を霊視すると、絡み合う2つの螺旋でできているように見えます。
1つは肉体に消えていく螺旋、もう1つは大宇宙に消えていく螺旋です。

また、夢を見る時には、「アストラル体」が、より「エーテル体」と結びつきます。
覚醒すると、大宇宙に消えていく螺旋はなくなります。

睡眠時の「アストラル体」は、宇宙的なアストラル界から法則を受け取り、それをエーテル体の建設に使います。

死後の人間は、まず、「肉体」を脱ぎ、次に「エーテル体」を脱ぎ、最後に「アストラル体」を脱ぎ、それぞれの死体はやがて消滅します。

「エーテル体」以上の存在は、心臓のところの結びつきを解いて、「肉体」を脱ぎ捨てます。
その直後、生前の体験が眼の前にパノラマのように現れます。

「エーテル体」を脱ぎ捨てた後には、先前の体験を、死ぬ時から誕生までを逆回転で遡って、3倍速で、霊的な眼前に体験します。
この時、自他の関係も逆に、つまり、自分が相手に与えた苦しみがあれば、それを自分の感情として体験します。
こうして、自分の欲望の結果を目の当たりにして見ることで、それを焼き尽くして消滅させます。

アストラル体を脱ぎ捨てた後は、霊界を認識してその世界を体験しますが、また、地上世界にも働きかけて、それを変化させます。

その後、やがて、霊界から流れてくる諸力を受けて、新しくアストラル体を形成し、再生します。
再生は、約1000年後に、異なる性別に転生します。
転生する直前には、次の人生で克服すべき障害、課題が目の前に絵のように現れて示されます。


<宇宙の階層構造>

シュタイナーは、神智学を継承して、宇宙の存在の階層を、7階層とそれぞれの7亜階層の構造で考えます。
亜層は上位3層、中間層、下位3層に分けて考えることもできます。

シュタイナーが詳細を語るのは、1「アティ界」、2「モナド界」、3「アートマ界」、4「ブッディ界」よりも下位の世界です。

5 神界(デーヴァ界、メンタル界、理性界)
・高次の神界(没形態界、霊芽・思考種子)
-1 生命核(霊人と生命霊)
-2 真実の行動
-3 意図と目標(霊我=自我の真の姿)   :霊界の光
・低次の神界(形態界、霊姿)
-4 思考の原像(下位3層の原像の統率)   :霊界の熱・火
-5 魂の原像(アストラル体を構成する諸力):霊界の大気圏(霊言)
-6 生命の原像(エーテル体を構成する諸力):霊界の大洋(霊的音響)
-7 物質の原像(肉体を構成する諸力)   :霊界の大陸(霊的色彩)

6 魂界(アストラル界、欲界、元素界、煉獄)
-1 魂の生命の領域    
-2 魂の活動力の領域  :ひとつのものが放射し他の中へ流出する活動性
-3 魂の光の領域    :外に向かって輝く、他の存在の光で自分を照らす
-4 快と不快の領域   :快(共感)と不快(共感の減少)
-5 願望の領域     :反感<共感
-6 流動的感応力性の領域:反感=共感 感覚に対する一時的感情
-7 燃える欲望の領域  :反感>共感 

7 物質界
-1 生命エーテル
-2 音エーテル
-3 光エーテル
-4 熱・火
-5 空気
-6 水
-7 地


<魂界(アストラル界)>

アストラル界は、欲望、要求の世界です。
その根本的な力は、他と融合する「共感」と、他を反発、排除する「反感」です。
下位の4層はその割合などで分かれます。

5、6、7は互いに浸透し合っていて、4は「熱」のようにそれらを貫き、1、2、3は「光」のようにそれらを照らす存在です。

アストラル界では、自分の感情、衝動は、自分に向かっていくように見えます。
ただし、特定の人間への悪意はその人に向かいます。

また、アストラル界は、色彩を通して語りますが、物質界とは明暗が逆で、色は補色で見えます。

そして、結果が先、原因が後で見えます。

死後、肉体を離れた霊魂は、物質界への執着の部分を低いものから順に消滅、浄化していきます。


<霊界(メンタル界)>

霊界は人間の思考内容を織りなす素材と同じ素材で織りなされています。
ただし、人間の思考内容の中に生きている素材は、この素材の真の本性の影、図式にすぎません。

霊界では、物質界と魂界にあるすべての事物の「霊的原像」が存在します。
「霊的原像」は、プラトンの「イデア」に当たる概念ですが、「イデア」よりも動的・創造的存在です。
シュタイナーはこれが「抽象概念」ではないと名言していることが重要で、その点で(後期)プラトンと違います。
ユングの「元型」にも似た性質も持ちます。

「霊的原像」は、抽象概念とも感覚像とも似ていません。
創造が本性であり、「霊的原像」の形態は急速に変化し、無数の特殊形態を取る可能性が存在します。
そして、「霊的原像」と別の「霊的原像」は互いに親密な関係にあります。

霊界の下層には「霊視」される「物質の原像」があり、その上層には「霊聴」される「生命の原像」が、さらにその上層には「霊言」として聞き取られる「魂の原像」があります。
これらは、死者の回りに形をとって現れます。

高次の神界である上位3層は、「原像の創造力」の世界、原像が「生きた胚種」の状態、「思考種子」が存在する世界です。
それは、世界の根底にある「意図」と「目標」の世界です。
ここに至るとアカシャ年代記(過去の記録)が読めるようになります。


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