南宗・北宗の内丹法

現在まで伝わる内丹の基準となる行法は、「金丹派南宗」を始めた張伯端によって作られました。
この派の内丹法は、以降のほとんどすべての派に影響を与え、北宗の伍柳派は、内丹法を広く一般に分かりやすく公開しました。

この項では、両派の清修の内丹法を紹介します。


金丹派南宋は張伯端(987-1082)が開祖で、白玉蟾が大成しました。
張伯端は四川の成都で活動した人物で、「周易参同契」を受け継ぎ、鍾離権、呂洞賓を奉じています。
南宗の丹法は、「悟真篇」、「玉清金笥青華秘文金宝内煉丹訣」、「金丹四百字」、「張紫陽八脈経」などに記されています。

清代の伍守陽(1574-1644)、柳華陽(1736-)の2人が確立した内丹派を「伍柳派」と呼びます。
全真道の北宗の、丘処機の竜門派を源流としています。
その内丹法は、伍守陽の「天仙正理直論」、「仙仏合宗語録」、柳華陽の「慧命経」、「金仙証論」などに記されています。

南宗、北宗ともに、その内丹法は、「性命双修(精神と気の両方をコントロールする)」です。
ですが、南宗は「先命後性(先に気のコントロールをする)」で、北宗は「先性後命(先に精神のコントロールをする)」です。
そして、南宗は「陰陽双修派(性的な房中術=栽接法も行う)」ですが、北宗は出家の教団のため、房中術を行わない「清修派」です。

南宗、伍柳派ともに、その内丹法は、大きくは、「煉己築基(築基入手工夫)」、「煉精化気」、「煉気化神」、「煉神還虚」の4段階に分けられます。

この中で、行法の対象は、「後天の精・気・神」→「元精」→「元気」→「元神」→「虚」と変化させていきます。

先天の「元精」、「元気」、「元神」の数は、「三」→「二(元気+元神)」→「一(元神)」→「〇」と変化します。

また、「元精」、「元気」、「元神」を結びつけて凝縮したものは、「外薬(小薬)」→「内薬」→「大薬」→「聖胎」→「陽神」と変化させます。

以下、具体的に順を追って、行法を紹介します。


1 煉己築基

「煉己築基」では、後天の精・気・神を煉り、元気の減少を補充し、任脈・督脈を通します。

基本的に、内丹で煉る対象となるのは、先天の「精」・「気」・「神」(以下、元精・元気・元神)で、これは「薬」、「三宝」、「真種子」と呼ばれますが、この段階では、後天の「精」・「気」・「神」が薬となります。

まず、心を落ち着かせ、黄庭に集中して、「欲神」をなくし「元神」を現わします。
これを、「守竅煉心」、「煉己守竅」、「玄関一竅」などを呼びます。
心が落ち着いた瞑想状態は、潜在意識的な意識の状態で、「意」と表現され、これは神と気を結びつける「媒」であり、「黄婆」とも表現されます。

北宗の場合は、この「性功」、つまり、無心(虚)になる精神的な瞑想を重視します。
そのため、この段階を「煉心還虚」と表現することもあります。
「先命後性」と「先性後命」の違いは、この段階での精神的な瞑想の重視する度合いの違いです。

次に、腎臓にある「精」が「気」に変わると、これを任脈・督脈に沿って回し、三関を通します。

これを行っているうちに、黄庭に「元気」が生じると、この段階が完成します。


2 煉精化炁(初関・三を二に帰す)

「煉精化炁」は、「初関」とも呼ばれ、「三を二に帰す」と表現されます。
このでは、「元精」を煉って「炁(精と気を煉った混合物)」に変えます。
この段階の瞑想の場所は、下端の「炉」は下丹田、上端の「鼎(鍋)」は泥丸で、「大炉鼎」、「大河車」と表現されます。

「煉精化炁」は、大きく「外薬煉採」と「内薬採煉」の2段階から構成されます。 

2-1 外薬煉採

さらに、「外薬煉採」は、「調薬」、「採薬」、「煉薬」の3段階から構成されます。

2-1-1 調薬

下丹田(黄庭)に集中し、「元精」と「神火」(気を煉って熱を持ったもの)を混ぜると、「陽光一現(眼前に光が現れる)」という現象が現れて、温かい感覚と共に「元気」が生じます。
これが下丹田から命門(腎臓の中間)に上がると、「外薬(小薬)」と呼ばれるものになります。

2-1-2 採薬

「外薬」を下丹田に入れて、そこに意識をかけて「神」をこらし、凝縮します。

意識かけて「神」を融合することを「採る」と表現します。
「外薬」は「生じてから採る」、次の「内薬」は「採ってから生じる」と言います。

2-1-3 煉薬(小周天)

「外薬」をさらに煉っていくと、「元精」が「炁」に変わり、動き出します。
これを任脈・督脈に回して下丹田に蓄えます。
これを「小周天」と呼びます。

2-2 内薬採煉

300回ほど小周天を重ねて、「外薬」を凝縮、蓄積します。
すると、すべての「精」が「炁」に変わり、「陽光二現(眉間に水銀のような一筋の白い光が現れる)」という現象が現れます。

そこで、火(熱)を止めて、下丹田で「元神」と結合させていると、会陰から丹田に「炁」が昇り、「内薬」が生じます。


3 煉炁化神(中関・二を一に帰す)

「煉炁化神」は、「中関」とも呼ばれ、「二を一に帰す」と表現されます。
この段階では、「炁」を「神」と一つにして煉り、「聖胎」・「陽神」にします。
この段階の「炉」は下丹田、「鼎」は黄庭で、「小炉鼎」、「小河車」と表現されます。

「煉炁化神」は、「七日採工」と「十月大周天」の2段階から構成されます。

3-1 七日採工(採丹)

「七日採工」は「採丹」とも呼ばれ、さらに、「採大薬過関」と「移胎服食」の2段階から構成されます。

3-1-1 採大薬過関

蓄積されていた「外薬」と「内薬」を結合させていると、「陽光三現(部屋に白い光が立ち込める)」という現象が現れて、「炁」が黄庭に集まります。

七日ほど煉り続けると、「六根震動」という現象が現れ、「大薬」が下丹田に生じます。
「六根震動」は、丹田では火が激しく燃え、腎は沸騰したようになり、目からは金色の光が出て、耳の後ろでは風が起こり、頭の後ろでは鷲が鳴き、身は沸き立つようで、鼻がひきつけられる、という6つの現象を指します。

3-1-2 移胎服食

「大薬」は頭頂から尾骨まで動きますが、鼻孔や肛門から体外に漏れないようにし(漏れる時は液体状になります)、最終的に黄庭に落ち着かせて、「神」と一つにして煉ります。
すると、「大薬」は「聖胎(胎児、嬰児)」と呼ばれるものになります。

3-2 十月大周天(養胎)

精神を無心にして、「聖胎」を下丹田と黄庭の間に安定させます。
これを「大周天」と言います。
瞑想を続けていると、4-5カ月で「胎」の形が出来上がり、「神」が「霊胎」と一体になって「陽神」になります。
「炁」が「神」に変化したのです。

さらに続けていると、10ヶ月で、「胎(丹)」は完成し、体は純粋な陽の性質になります。
この過程を「養胎」と呼びます。


4 煉神還虚(上関・一を〇に帰す)

「煉神還虚」は「上関」とも呼ばれ、「一を〇に帰す」と表現されます。
この段階では、「陽神」を、「道」に一体化させ、「虚」に戻します。

「煉神還虚」は、「三年哺乳」と「六年温養」の2段階から構成されます。
「虚空粉砕」や「還虚合道」を別に数えることもあります。

4-1 三年哺乳(出胎)

「陽神」を上丹田に移し(移胎)、静かに意識をかけて強化することを、3年続けます。

すると、六通が完全になり、美しい景色が見えるようになります。
そして、天門(頭頂の門)が動き出し、骨と肉が離れるように、「陽神」が肉体から分かれます。
これを「出胎(出神)」と呼びます。

4-2 六年温養(虚空粉砕)

その後、頭頂から「陽神」を少しだけ体外に出して、また戻すことを、六年ほど続けます。
体の回りに金色の光が現れるので、この光を外に出した「陽神」の中に吸収し、「陽神」を体の中に戻します。

「陽神」を「虚」に戻すように煉っていると、光が放射されます。
さらに肉体を煉って「陽神」の中に溶け込ませ、光を照らすと、肉体は消失して「炁」になります。
これを「虚空粉砕」と呼びます。

こうして、「陽神」は「虚」に還り(還虚)、「道(タオ)」と一体化(合道)します。

鍾呂派の内丹法

五代の10C頃、伝説的な隠者の鍾離権と呂洞賓(798-)を奉じる「鍾呂金丹派」とい内丹派が生まれました。
鍾呂金丹派は、内丹の行法を、最初に確立した内丹派で、後代の内丹に大きな影響を与えました。

この派の内丹に関する有名な書には、二人の名による「霊宝篇」、「霊宝畢法」や、呂洞賓の弟子の施肩吾による理論中心の「鍾呂伝道集」などがあります。

「鍾呂伝道集」は、次のように18章から構成されています。
真仙論、大道論、天地論、日月論、四時論、五行論、水火論、竜虎論、丹薬論、鉛汞論、抽添論、河車論、還丹論、煉形論、朝元論、内観論、魔難論、証験論。

「霊宝畢法」は宋代の書で、具体的な行法が説かれており、次の10章で構成され、それが、内丹行法の10段階になっています。
10段階というのは、受胎から出産までの10か月に合わせているのでしょう。

そして、10段階が大きく3乗に分けられています。
小乗は、長寿を得て「人仙」になる段階、中乗は不老不死になって「地仙」になる段階、大乗は昇仙して「天仙」になる段階です。

具体的には下記の通りです。

・小乗
第一:匹配陰陽、第二:聚散水火、第三:交媾龍虎、第四:焼煉丹薬
・中乗
第五:肘後飛金晶、第六:玉液還丹、第七:金液還丹
・大乗
第八:朝元煉気、第九:内観交換、第十:超脱分形


<陽気陰液循環相生説>

鍾呂派では、「陽気陰液循環相生説」と基本としています。
陰陽五行説に基づいて、天の気の循環、身体の気の循環に合わせて、内丹の行を行うものです。
年周期、日周期の循環を、八卦の周期として捉え、五行に対応する五蔵の気の動きを利用します。
つまり、どの季節、どの時間に、どの行を行うかが決まっています。

陰陽五行説では、陰が極まると陽が生じ、陽が極まると陰が生じます。
陰には液、陽には気が対応するので、液から気が、気から液が生じることになります。

五臓では、陰には肺、陽には肝が対応します。
また、地つまり陰には腎が、天つまり陽には心が対応します。
腎には水=液があり、心には火=気があります。

つまり、下記のような対応関係になります。

・陰:液:肺…地:腎:水
・陽:気:肝…天:心:火

心臓の気と、腎臓の液を混ぜることで、陰陽を相生させる、陰から陽を生み、陽から陰を生むようにするということです。
これが自然の創造の原理であって、胎児が生まれ育つことの再現になります。


<具体的な行法>

具体的な各段階の方法について、簡単に説明します。

・第一:匹配陰陽

基礎である「築基」の段階で、「気を閉ざして液を生じ、液を集めて気を生じる」と表現されます。
天地の気を吸収し、「元気」を少しだけ吐き出し、この二気を合わせ、気を蓄えることで、「液」を生じさせます。

・第二:聚散水火

導引、按摩、津液(唾液)を飲み込む嚥津法を行い、「心火」(心臓の温かい気)を下し、膀胱の気を上昇させ、腎蔵の気の火に合わせて、下丹田を温める。

・第三:交媾龍虎

「腎水」と「心火」を合わせて、上昇・下降させます。
上昇した陽が極まると陰を生じて下降する、下降した陰が極まると陽を生じて上昇すると考えます。

「腎気」は、「真水」ですが、陰中の陽、「一陽」、「臣火」であり、「嬰児」、「虎」と表現されます。
膀胱から「民火」が上昇する時、この「臣火」=「虎」を心臓に上げて、心臓の「君火」と合わせます。
すると、心臓の陽が極まって陰=「液」を生じますが、これを「タ女(タは女偏に宅)」、「龍」と表現し、これを下降させます。
そして、黄庭で「真気」が発生する時に、心臓の上、肺の下で「竜虎」を合わせます。
この「竜虎」を合わせたものを「黄芽」とも言います。
これを、「下丹田が中丹田へ返る」と言います。

「龍」と「虎」を生むことを「採薬(離卦採薬)」と言い、これを合わせることを「採合」と言います。

・第四:焼煉丹薬

黄庭に意識を集中して気を温めます。
これを、「勒陽関(乾卦勒陽関)」と言い、「中丹田が下丹田へ返る」とも表現します。
中丹田と下丹田の間、五臓のルートを中心に気を回すので、これを「小河車」と表現します。

これを続けて100日経つと、「薬」は完全になります。

・第五:肘後飛金晶

「肘後」は、脊髄に沿って体の背面を走る「督脈」のことです。
「金晶」は竜虎が合わさったものことで、これを督脈に沿って脳に上昇させ、三関を突いて頭頂の泥丸に入れます。
これを「下丹田が上丹田に返る」と表現します。
下丹田と上丹田の間で気を回すので、これを「大河車」と表現し、「小周天」とも言います。

これを200日続けると、「胎」は堅くなります。

・第六:玉液還丹

「玉液」は、気を煉って竜虎を交えた後、舌の下に生じる甘い唾液(津液)のことです。
この「玉液」を飲み込んで中丹田から下丹田に入れて、(金)丹に合わせることを、「玉液還丹」と呼びます。

その後、「玉液」を、これを下丹田から手足に流して煉ると白くつややかになりますが、これを「玉液煉形」と呼びます。

・第七:金液還丹

「金液」は、腎気と心気を合わせて、肺に入れて生まれる肺液のことです。
これを下降させて下丹田に入れるのが、「金液還丹」です。
その後、上丹田に上げます。
下丹田・黄庭に入れて、「金液」が丹になるので「金丹」と言います。

これを300日ほど続けていると、「真気」を生じる「大薬」になります。
「大薬」になってからの「大河車」は「大周天」と呼ばれます。

その後、これを下丹田から手足に流すことを、「金液煉形」と呼びます。

・第八:朝元煉気

天地人体の気の動きに合わせて丹を煉ります。
「四季煉気法」では、季節ごとにバランスをとって、五臓各所の気を煉ります。

聖胎で五臓を煉ると陰気が消えて、神々が顕現し、「陽神」が上丹田へ上りますが、これを「五気朝元」と呼びます。

また、中丹田の陽気と、下丹田の先天の陽気と、金丹を上丹田に上らせますが、これを「三花朝元」と呼びます。
この時、身体が純陽になって、「陽神」は不老不死となります。

・第九:内観交換

「内観」は、無心の瞑想によって、気・丹を煉ることです。
魔境(妄想・幻覚)が起これば、「焚身」と言って、魔境を無視して、気で火を起こし上昇させます。

・第十:超脱分形

「内観」していると、真気が昇天し、体が空中にあるよう感じ、美しい風景が出現するようになります。
これを「陽神出頂」と言い、陽神は、嬰児の姿をしています。

精神的な到達で見るヴィジョンではなく、生み出した不死の気の身体と共に、肉体を離脱し、昇仙するのでしょう。

内丹の思想

道教の思想は、生を肯定し、死を否定することが特徴であり、実践においては養生術が重視されます。
養生術は、健康・長寿だけでなく、不老不死・昇仙を目指すもので、外丹(煉丹術)、存思法(観想法)、房中術、導引・服気(気功)、吐納(呼吸法)、食餌・辟穀(食事法)などの方法があります。

内丹法は、仙道の養生術の一つであり、宗代以降は、内丹法が養生術で第一のものとされるようになりました。
その目的は、不死の霊体を作り、肉体をそれに溶けこませ、最終的には「道」に一体化することです。

内丹法を一言で表現すると、気をコントロールする瞑想によって、体内に気の「胎」を作り(結胎)、成長させる(養胎・出胎)方法です。
そのため、道教に関わらず、中国思想の気の身体論や、胎生学の影響を受けています。

また、内丹は、道家の「忘坐」などの瞑想法や、「道」に関する思想、儒教の陰陽五行説、仏教(禅)の瞑想法や思想などの影響を受けています。
そのため三教の一体や一致を主張する派が多くあります。

仙道の初期の養生術は、外丹(煉丹術)や存思法、房中術が主な養生法であったため、内丹には、それら用語を比喩的に使用することが多くあります。
「丹」という表現も、外丹から取った象徴表現です。


<性と命、天と人>

「内丹」は「外丹」に対比した呼び名ですが、外丹を「陽丹」、内丹を「陰丹」と表現することもあります。

内丹には大きく2種の方法があります。
精神・心をコントロールする「性功」と、気をコントロールする「命功」です。
多くの派は両方を必要とすると考えており、これを「性命双修」と呼びます。

どちらを重視するか、どちらから先に取り組むかによって、2派に分かれます。
先に心(性)に取り組み、それを重視するのが「先性後命」で、北宗などがこれに当たります。
先に気(命)に取り組み、それを重視するのが「先命後性」で、南宗などがこれに当たります。

「性功」は、心を集中し、静め、無心になることが中心です。
道家の言葉で「忘坐」、仏教の言葉で「定」などと表現することもあります。

無為、無心な心を「元神」、あるいは、禅宗の影響で「見性」と表現することもあります。

「性功」の目的には、最終的には心を「道(虚・無)」に一体化し、それに還ることです。
根源存在に還ることは、神秘主義思想に共通する目的です。

「命功」は、気を煉って凝縮し、その性質を変えたり、その塊を体の中で移動させていくことが中心です。
最初は、後天的な「気」を使い、その後、先天的な「精」を「気」にし、「気」を「神」にします。
「命功」の目的は、同じく、身体を「道」に還すことです。


「命功」には、2種類の方法があります。
一つは、異性を相手にした性的な方法を使って、男女の間で陰陽の気を交換する「房中術」、「陰陽栽接法」と呼ばれる方法です。
この方法を使う派を「陰陽双修派」と呼びます。
南宗とその系統の西派、東派、三丰派などがこれに当たります。

もう一つは、一人で、自分の体内で陰陽の気を結びつける方法で、「清修」と呼ばれます。
これのみを行う派を「清修派」と呼びます。
文始派、北宗とその系統の伍柳派などがこれに当たります。

清修を「天元丹法」、房中術を「人元丹法」を呼ぶこともあります。
この対比では、外丹を「地元丹法」と呼びます。 


<逆修返源>

中国の胎生学では、天と地が交わり、「陰陽二気」が胎内に降りて「胎」が結ばれ、「精」となり、やがて「神」に変化し、人身となる、と考えます。

胎児の間は、「先天の気」のみが働きますが、誕生後の嬰児は、呼吸や食物を通して「後天の気」が働くようになり、老死に向かいます。

その後も成長し、16歳になると、男性の場合は、先天の気の部分では、「純陽」の身体が完成します。
ですが、異性に性欲を感じるようになると、「純陽」の体が破れ、その中から「陰」が発生します。
これは、陽が極まると陰が生じる、という陰陽説の基本原理により説明されます。
そのため、ここで生じる陰気は、先天の気であるとします。

八卦で表現すると、「乾」から「離」への変化です。
―   ―
― → - -
―   ―

女性の場合は、陰陽が逆となり、「坤」から「坎」へと変化します。
- -   - -
- - → ―
- -   - -

こうして、男女ともに、先天の気・精が減少していきます。

内丹は、後天の気と、先天の気の減少によって死すべき存在となった身体を、逆行させます。

つまり、再度、身体の中で陰陽を結んで「胎」を作り、成長させて純陽の不死の身体とします。
ただし、子供を生める女性の場合、「胎」がすでに存在するので、「胎」を結ぶプロセスは不要です。

次に、成長した「胎」は体から出して(出産に相当する「出胎」、「出神」)、さらに成長させます。
最後には、それを根源存在の「道(無、虚)」に戻します。

この逆行を「逆修返源」と呼びます。

ただ、逆行とは言っても、純粋に時間を遡っていくわけではありません。
「胎」を結んで成長させるプロセスは、やり直し、再生と言うべきものです。

また、結胎以降、「気」は「精」、「気」、「神」という3形態に分離しますが、内丹法では、これを順次統合して戻していきます。
ちなみに、「精」と「気」を一つにしたものを「炁」と表現します。
また、「炁」と「神」を一つにしたものを「陽神」と表現します。

この点でも「逆修返源」となっていますが、やはり、純粋に時間を遡っていくわけではないようです。


<三関修煉>

上記の人間の成長プロセスは、次のように「三変(3段階)」を経ると考えます。

まず、陰陽二気が結ばれ、受胎して胎児になることが「第一変」です。
出産して嬰児になり、胎息ではない外呼吸が開始され、「後天の気」が生まれることが「第二変」です。成人して純陽の体が破れ、先天の気・精が減少していくことが「第三変」です。

内丹法のプロセスは、上述したように「逆修返源」です。
それは、「三変」を逆行させ、「精」、「気」、「神」を順に変化・統合するプロセスです。

この内丹法のプロセスは、宗代の金丹派南宗以降、多くの派では、次の4段階で考えられるようになりましたが、最初の段階は準備段階ですので、本質的には3段階になります。

0 煉己築基    :後天の気を煉る
1 煉精化気(初関):三を二に帰す(精・気・神→炁・神)
2 煉気化神(中関):二を一に帰す(炁・神→神)
3 煉神還虚(上関):一を○に帰す(神→虚)

この3段階の「初関」、「中関」、「上関」の3つを「三関修煉」と呼びます。

とは言っても、「三変」と「三関」は、直接的に逆対応するものではありません。

「築基」は、「第三変」で成人になって以降の先天の気の減少を、後天の気を煉ることで補うものです。
「初関(百日関)」は、「第一変」以降に分離した先天の精を気に戻すものでしょう。
「中関(十月関)」は、結胎して「第一変」後の胎児に還り、養胎という胎児としての成長をやり直すものでしょう。

「上関(九年関)」は、「煉神」と「還虚」に分けることができます。
「煉神」は、移胎・出胎して、「第二変」後の嬰児になってさらに成長するものでしょう。
「還虚」は、温養によって「第一変」以前に戻って逆行し、虚に還ることです。 


<元神と欲神>

「神」は意識性を持った「気」です。

内丹は「先天の精・気・神」を重視します。
「後天の神」が通常の作為的な意識、自我の意識であるのに対して、「先天の神」は、無意識的な、無為の意識です。

「先天の精・気」の動きに対応するのが、「先天の神」であり、「元神」とも呼ばれます。
「後天の精・気」の動きに対応するのが、「後天の神」であり、「欲神」とも呼ばれます。

また、内丹派は、禅宗の影響も受けています。
禅宗では、通常の意識・智恵を「分別智」と呼ぶのに対して、心の基盤としての仏性の知恵を「見性」と表現します。
なので、内丹派は「元神」を「見性」と同じと考えて、そう呼ぶこともあります。
あるいは、「真性」、「真心」などとも表現されます。

「神」の瞑想には、「性功」の側面と「命功」の側面があります。

「性功」においては、「元神」が現れた状態とは、概念もイメージもなく、作為性もない無心の状態です。
基礎の段階の「煉己築基」では、初歩的な「性功」を行います。
伍柳派はこの段階を「煉己還虚」と表現しますが、「煉己」の「己」は、「後天の神」であり、「還虚」に対応するのは「先天の神」です。
最後の「煉神還虚」の段階では本格的な「性功」を行いますが、いずれも、無為無心の状態になります。
「煉神」の「神」は、「先天の神」です。

一方、「命功」においては、「煉己築基」の段階では、「後天の精・気」をコントロールし、煉りますが、これを行うのは作為的・意識的な「後天の神」です。
しかし、「煉精化気」以降の段階では、「先天の精・気」を煉りますが、これを行うのは無為の「先天の神」です。
まったくの作為性、コントロールの意識なしに「命功」の瞑想はできませんが、作為性を最小限にしてこそ、「先天の精・気」が動きます。


<龍虎の交わり>

房中術を行う陰陽双修派の論理では、男女が互いに先天の気を補うために房中術が必要と考えます。

つまり、男性の場合は、先天の純陽の体が破れて先天の陰気が生まれ、女性の場合は先天の純陰の体が破れて先天の陽気が生まれます。
そのため、男性は女性から先天の陽気をもらい、女性は男性から先天の陰気をもらいます。
卦で言えば真ん中の爻に当たる部分です。

陰陽双修派は、房中術によってしか、この自分に欠けた先天の気を補えないと考えます。
ですが、清修は、自分の体の中で、先天の陰陽二気を結んで「胎」を生み出します。

陰の気は、腎臓の部分にあり、ここから陽の気が生まれますが、これを「竜」と表現します。
陽の気は、心蔵の部分にあり、ここから陰の気が生まれますが、これを「虎」と表現します。
この二気を結んで胎を作りますが、これを「竜虎の交わり」と言います。

「竜虎の交わり」を重視するのは、唐末から五代の鍾呂金丹派です。

また、陽から生まれる陰である「虎」は、「た女(「た」は女偏に宅)」とも表現され、一方、陰から生まれる陽である「竜」は「嬰児」とも表現されます。


<五行と黄庭>

陰陽五行説では、対極→陰陽→五行→万物と展開します。
内丹法では、五行は五臓に相当します。
そのため、気を五臓の巡回ルートで移動させることが、鍾呂金丹派などでは重視されました。

五臓の気のルートは、肝(木)→心臓(火)→脾臓(土)→肺(金)→腎臓(水)という五行の順番で考えるのが一般的です。

陰陽の「竜虎の交わり」の主役である心臓は「火」、腎臓は「水」に対応します。
ですから、これは火と水、「腎水」と「心火」の交わりでもあります。

また、五行で、方位が中央に位置するのは土で、色は黄です。
そのため、陰陽である竜虎が交わったものを育てる場所としては、五臓の中央である脾臓を重視し、それを「黄庭」と呼びます。
ここは、中丹田と下丹田を結ぶ場所でもあります。

また、五臓の神を上丹田で会合させることを、「五気朝元」と呼びます。


<外丹の比喩>

上述したように、内丹では、先に発達した養生法の外丹の用語を比喩で使います。

外丹(煉丹術)では、鉱物などの素材を「薬」、それを化学変化させて製造する生成物を「丹」と呼びます。
この外丹の比喩から、内丹における素材である先天の精・気・神を「薬」、それを変化させたもの、胎も含めて「丹」と表現します。

内丹の「薬」には、「外薬(小薬)」、「内薬」、「大薬」などがあります。
内丹の「丹」には、「金丹(玉丹)」、「金液(玉液)」などがあります。

また、性功を「内薬」、命功を「外薬」と表現することもあります。

外丹では、「水銀(汞)」が陰とされ「兎」とも表現され、「鉛」が陽とされ「烏」とも表現されます。
そのため、内丹の「竜虎の交わり」で生まれる「虎」は「水銀」、「兎」、「竜」は「鉛」や「烏」とも表現されます。

外丹では、化学反応をさせるためには加熱が欠かせません。
内丹でも、意識(神)をかけて気を煉ると、熱が発生します。
そのため、内丹は、熱のコントロールを「火候」と呼びます。 

外丹の化学反応では、加熱するための「炉」、そして「鼎(鍋)」を使います。
そのため、内丹法では、気を体内で移動・循環させますが、その主要なスポットの下端は「炉」、上端は「鼎」と表現されます。

「煉精化気」の段階の行法では、「炉」は下丹田、「鼎」は上丹田となり、その距離が長いのでこれを「大鼎炉」、または「大河車」と表現します。
「煉気化神」の段階の行法では、「炉」は下丹田、「鼎」は中丹田となり、その距離は短いのでこれを「小鼎炉」、または「小河車」と表現します。

また、房中術では、男性を「乾鼎」、女性を「坤炉」と表現します。

「煉精化気」の段階で、「外薬」を「大河車」で回すことを「小周天」と言い、これによって「精」を「炁」に変えます。
「煉気化神」の段階で、「大薬」、「聖胎」を「小河車」で回すことを「大周天」と言い、これによって「炁」を「神」に変えます。